スー・チー氏、初判決の後に待ち受ける計100年以上の「禁錮判決ラッシュ」

不条理な法廷闘争はいつまで続くのか
大塚 智彦 プロフィール

また、軍政側としてはクーデターから1年の節目となる2022年2月までにスー・チーさんに関する全ての裁判を終えたい意向とみられ、今後相次ぐと予想される実刑判決に弁護団が上訴を繰り返す事態になれば裁判の長期化は避けられない。

そうなると早期の裁判終了でスー・チーさんの刑を確定してその政治生命を絶ち、国内のスー・チー人気を抑えたいという思惑が外れることにもなり、軍政側としても新たな対応が求められることになるのは間違いないだろう。

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反軍政の武装闘争は激化する一方

スー・チーさんへの実刑判決が下る前日の5日、中心都市ヤンゴンでは反軍政を掲げた若者によるデモ行進に軍の車両が突入して5人が死亡、多数が負傷、逮捕される事態も起きている。

この時の現場の様子を市民が隠し撮った映像がSNSなどにアップされているが、そこには走って逃げるデモ参加者の背後から猛スピードで突っ込む軍用車と、轢かれて倒れた人が映っていた。

このように軍や警察による反軍政の活動に対する強権的弾圧は各地で激化している。

 

一方、民主化勢力である「国家統一政府(NUG)」の傘下にある武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」も、ヤンゴンをはじめとする各都市で、軍の拠点や警察施設へのゲリラ攻撃や車列への待ち伏せ攻撃、軍の通信施設約100ヵ所の破壊などで抵抗を続けている。

特に西部国境地帯のチン州や東部国境地帯のシャン州、カチン州では長年にわたって軍と対立してきた少数民族武装勢力とPDFが連携して、市民への軍事訓練、武器供与、そして共同作戦の展開などで攻勢を強めている。

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