オミクロン株が拡大…でも相変わらず「空港の検疫がPCRじゃない」日本の“決定的なヤバさ”

山岡 淳一郎 プロフィール

やや専門的になるが、少し補足したい。

PCR検査は、採取した検体(唾液、鼻咽頭スワブなど)に含まれるウイルスの特定のターゲット遺伝子を「増幅」させて検出する方法だ。その検出可能な閾値に達するまでにPCRで何回増幅を行なったかを示す数値がCt値である。Ct値が低い(増幅回数が少ない)ほど、ウイルス量が多く、Ct値が高い(増幅回数が多い)ほど、ウイルス量は少ない。

日本のPCR行政検査では、Ct値=40未満を陽性としている。つまり、国立感染研の見解を当てはめれば、抗原定量検査は、Ct値30~40未満の陽性者を「陰性」と判定しがちなのだ。国立感染研は、抗原定量検査について、「検査としては、 RNA抽出が不要であることと、測定時間が短いことから、例えば、 施設内で定期的に行うスクリーニング検査など、多検体を処理する場合に使用することが考えられる。ただしその際には、ウイルス保有量が少ない患者を見逃す可能性に留意する」と釘を刺している。

PCR検査のほうが優れているのは論を俟たない。なぜ、政府は、すべての入国者にPCR検査を実施しないのだろうか。

12月3日、国会議員団の政府へのヒアリングで、オミクロン株の水際対策に焦点が当たった。共産党の倉林明子参議院議員が空港での検査をPCR検査に切り替えるよう指摘すると、政府の担当者は、大量のPCR検査機器を置ける「場所がない」と応じたという。

 

最初期からおかしかった対応

日本の水際対策には、パンデミックの発生当初から一貫して「楽観バイアス」がかかっている。拙著『コロナ戦記 医療現場と政治の700日』にも記したが、2020年1月ごろの、もっとも大切な「初動」での立ち遅れが後々まで響いた。

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