オミクロン株が拡大…でも相変わらず「空港の検疫がPCRじゃない」日本の“決定的なヤバさ”

山岡 淳一郎 プロフィール

小池都知事も、翌7月28日の会見で「重症化しやすい高齢者の割合が減っている」「おうちで五輪の応援を」と呼びかける。いずれも高齢の感染者の少なさを楽観材料として、五輪批判を封じようとしていた。現場はしかし、五輪どころではなかった。

ちょうどそのころ、江東区の保健師、山本民子さんは私のインタビューにこう答えた。

「38℃以上の高熱が出ていても、重大な基礎疾患がなければ、都の入院調整本部を介した入院は困難です。中等症の患者さんが自宅療養を強いられています。重症リスクの高い妊婦さんが高熱と咳が止まらず、発症から3日目にやっと大学病院に入れたけど、肺炎を併発して緊急の帝王切開で出産しました。ホテル宿泊療養の対象が、65歳未満から30歳未満に限定されました。五輪でホテルが塞がっているそうです……」

 

すでに第5波の医療崩壊は起きていた。インド由来のデルタ株が猛威をふるう。東京都では、数名の基礎疾患のない30代の男性がそれぞれ感染し、入院できないまま自宅で死亡した。なかには初回のワクチン接種から8日後に亡くなったケースもある。若い世代は重症化しにくいという説は崩れる。感染爆発が起き、病床が足りず、患者が自宅に放置されれば、たとえ若くても軽症から中等症、重症と急速に悪化して命を落とす。

「国民の命と健康を守る」と言い続けた菅首相は、約束を果たせず辞任したものの、国会議員の職にとどまっている。医療が逼迫する渦中で、不安を煽るなと言い放った都庁幹部の吉村氏を、小池知事は10月25日付の人事異動で「財務局長」に栄転させた。

これが日本の政治の実態だ。誰も責任をとらない。オミクロン株の毒性は低くあってほしいが、全容はつかめていない。楽観バイアスで対策を歪めないよう願うばかりである。

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