2021.12.16
# ビジネス

ボーナスをアップしたところで、社員の「生産性」は上がらない“科学的な理由”

力を入れて指導しているのに結果が出ない、目標を厳しく伝えているのにやる気になってくれない……。部下や後輩を持つ人なら、心当たりのある悩みだろう。人のモチベーションを上げるには、どうすればいいのだろうか? 著書『だから僕たちは、組織を変えていける』を出版した、起業家・経営学者の斉藤徹氏は、お金ではモチベーションは上がらないと語る。その科学的な理由と、モチベーションを本当に上げるものは何なのか、解説してもらった。

人のやる気はどこから生まれる?

あなたは、ぶら下がり棒に何秒ぐらいぶら下がれるだろうか?

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1953年のこと、ハーバード大学の神経学者だったロバート・シュワブは、筋肉疲労の仕組みを調査するために実験を行い、普通の人が棒にぶら下がって我慢できる時間は約50秒であることを割り出した。

では、誰かに応援されたり、催眠術をかけられたりしたらどうなるのだろうか。実験してみると、その効果はてきめんで、平均で約75秒、被験者は手首の屈筋の痛みに耐えてみせた。

最後に、シュワブは究極の武器を使うことにした。「お金」である。彼は5ドル札(今の約4000円に相当)を被験者に見せた上で「これまでの成績を上回ったら、このお金をお渡しします」と伝えたところ、参加者は、なんと平均約2分もの間、鉄棒にぶら下がり続けることができた。

お金を受けとることで態度が変わる人を「現金な奴」などと揶揄するが、そもそも人間とは現金な生き物だったのだ。

もうひとつ、2007年にハーバード大学の経済学者ローランド・フライヤーが行った大規模な試みを紹介しよう。彼は3.6万人の子どもに総額10億円ものお金を支払い「お金の力がどのくらい成績を引き上げるか」という興味深い実験を行った。

 

対象となったエリアは、ニューヨーク、シカゴ、ワシントン、ヒューストン、ダラスの米国5都市で、各都市はそれぞれ独自性を加えられるようにした。

その結果、不思議なことに、ダラスだけが成績を上げることに成功したのである。理由は明確だった。ダラスはお金の渡し方を工夫したのだ。

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