ボーナスをアップしたところで、社員の「生産性」は上がらない“科学的な理由”
人のやる気はどこから生まれる?
あなたは、ぶら下がり棒に何秒ぐらいぶら下がれるだろうか?

1953年のこと、ハーバード大学の神経学者だったロバート・シュワブは、筋肉疲労の仕組みを調査するために実験を行い、普通の人が棒にぶら下がって我慢できる時間は約50秒であることを割り出した。
では、誰かに応援されたり、催眠術をかけられたりしたらどうなるのだろうか。実験してみると、その効果はてきめんで、平均で約75秒、被験者は手首の屈筋の痛みに耐えてみせた。
最後に、シュワブは究極の武器を使うことにした。「お金」である。彼は5ドル札(今の約4000円に相当)を被験者に見せた上で「これまでの成績を上回ったら、このお金をお渡しします」と伝えたところ、参加者は、なんと平均約2分もの間、鉄棒にぶら下がり続けることができた。
お金を受けとることで態度が変わる人を「現金な奴」などと揶揄するが、そもそも人間とは現金な生き物だったのだ。
もうひとつ、2007年にハーバード大学の経済学者ローランド・フライヤーが行った大規模な試みを紹介しよう。彼は3.6万人の子どもに総額10億円ものお金を支払い「お金の力がどのくらい成績を引き上げるか」という興味深い実験を行った。
対象となったエリアは、ニューヨーク、シカゴ、ワシントン、ヒューストン、ダラスの米国5都市で、各都市はそれぞれ独自性を加えられるようにした。
その結果、不思議なことに、ダラスだけが成績を上げることに成功したのである。理由は明確だった。ダラスはお金の渡し方を工夫したのだ。