「お金」でモチベーションは上がらない
他の4都市では「成績が上がった子ども」に対してお金を支払ったのに対して、ダラスの場合は「指定した課題を達成した子ども」に対してお金を支払った。例えば、読書をした子どもに1冊あたり2ドルを与えた。その結果、その子どもは読解力を向上させたのだ。

しかし、ダラスの効果も長くは続かず、一年たつと改善率は半分に低下してしまった。また、報酬を与えることで、報酬なしのワークに興味を持たなくなることも明らかになった。
これらの実験からわかることはなんだろう。まず、お金は単純なこと、誰でも努力すればできることに対して、一時的に著しい動機づけになるということ。一時的に「我慢する力を高める」と言い換えてもいいだろう。ただし、継続すると効果が薄れてしまう。また、いったん報酬を出すと、報酬なしでは努力しなくなってしまう。
お金は、明らかに人の行動を変化させるが、効かないことも多い。また、長期的に見ると、麻薬のように恐ろしい負の影響があるのだ。
動機づけにおいて、お金は万能ではないことがわかった。その後の研究で、これらはお金特有の問題というより、賞罰などで「外部から行動を強いるような動機づけ」には共通することで、そのような動機づけにはいくつもの問題があることがわかってきた。
・好奇心を失わせる
・正解のない、高度な業務の生産性を落とす
・創造性をはばむ
・好ましい言動(善行)への意欲を失わせる
・ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長させる
・依存性がある(なしでは働かなくなる)
・短絡的思考や短期的思考を助長する