2021.12.18
「1億円の壁」問題が、これほどまでに“賛否を巻きおこす”根本原因
金融所得課税強化の問題点はどこに?格差の是正へ、賃金引上げとともに第2の柱として浮上した「金融所得課税の強化」。だが、岸田文雄首相は検討を指示しては撤回、再び検討を指示するなど、議論は迷走している。金融所得課税とはどのようなもので、何が問題なのだろうか。
日本の「格差」の正体
日本の賃金が上昇していないことは様々な報道もあり、言わずもがなだろう。ただ、意外にも賃金が格差拡大の要因とはなっていない。
所得の不平等を表わす「ジニ係数」。ジニ係数は分布の均等度を表わすもので、0から1の間の値を示す。所得が均一で格差が全くない状態ならば0、たった一人が全ての所得を独占していれば1となり、ジニ係数が1に近づくほど不均等で、格差が大きいと判断できる。
総務省が5年に1度実施する「全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)」から可処分所得のジニ係数を見ると、99年の0.273から09年には0.283と格差が拡大しているが、その後は低下し、19年には0.274と99年と同水準になっている。(表1)

日本全体の賃金が上がらず、国際的には日本人が貧しくなっているものの、国内での所得による格差は拡大していないと言える。