ところが、ここには「1億円の壁」と呼ばれるものがある。所得(労働所得と金融所得の合算)が1億円を超える高額所得層では、所得に占める金融所得の割合が増加する。
所得が600万円未満の層では、金融所得は所得全体の1%未満なのに対して、1億円を超えると17%以上となり、50億円を超えると所得の90%以上は金融所得となる。
この結果、所得1億円を境として、金融所得にかかる 20%の分離課税の割合が増加することで、所得全体への税負担率(総合課税と分離課税による税額の所得に占める割合)は、所得1億円までは27.9%だが、1億円を超えると23.2%に低下する。
単なる金融所得課税の強化はキケン
この問題が金融所得課税の強化策を複雑にしている。例えば、金融所得にかかる分離課税を20%から引き上げれば、確かに高額所得者の税負担率を引き上げることもできる。だが、それでは低所得者の金融所得まで増税してしまうことになる。
年金生活者など金融所得を生活の支えにしている人たちや、これから資産形成を行っていく若年層にとっては、金融所得への税率引き上げはダメージが大きい。