2021.12.18

「1億円の壁」問題が、これほどまでに“賛否を巻きおこす”根本原因

金融所得課税強化の問題点はどこに?
鷲尾 香一 プロフィール

ところが、ここには「1億円の壁」と呼ばれるものがある。所得(労働所得と金融所得の合算)が1億円を超える高額所得層では、所得に占める金融所得の割合が増加する。

所得が600万円未満の層では、金融所得は所得全体の1%未満なのに対して、1億円を超えると17%以上となり、50億円を超えると所得の90%以上は金融所得となる。

この結果、所得1億円を境として、金融所得にかかる 20%の分離課税の割合が増加することで、所得全体への税負担率(総合課税と分離課税による税額の所得に占める割合)は、所得1億円までは27.9%だが、1億円を超えると23.2%に低下する。

 

単なる金融所得課税の強化はキケン

この問題が金融所得課税の強化策を複雑にしている。例えば、金融所得にかかる分離課税を20%から引き上げれば、確かに高額所得者の税負担率を引き上げることもできる。だが、それでは低所得者の金融所得まで増税してしまうことになる。

年金生活者など金融所得を生活の支えにしている人たちや、これから資産形成を行っていく若年層にとっては、金融所得への税率引き上げはダメージが大きい。

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