そこで考えられるのが、例えば米国が実施しているように、金融所得についてもその所得額によって累進税率を導入することだ。米国では、金融所得の分離課税を0%、15%、20%の3段階で課税している。
もう一つが、金融所得も総合課税に算入して累進税率とする方法だ。これにより、所得の低い層にとっては、金融所得にかかる20%の分離課税分が総合課税に乗り替わることで、税負担率が低下する。一方で、高額所得者の税率は引き上げられることになる。

だが、そこには大きな懸念材料がある。金融市場の衰退だ。高額所得者の金融所得の大きさは、株式市場など金融市場での運用額の大きさでもある。金融所得課税が強化されれば、株式市場などへ大きな影響が出ることが懸念される。岸田首相が金融所得の課税強化を先送りした理由の一つもここにある。
さらに、政府が進めてきた“貯蓄から投資”という流れに逆行することにもなり、特にこれから資産を蓄えていこうとする若年層にとっては、大きな障害となる。
また、下世話な言い方だが、起業して株式上場し、売却益で一発当てようというバイタリティや起業家意欲を削ぐことにもなりかねない。