重力波の検出は本当なのか!?
その理由は、そのときに送られてきたメールを読むと分かります。実際の文面はすでに公開されていますので、日本語に訳したものをこのコラムの末尾に掲載します。
その内容をまとめると、
- このメールの2日前、9月14日に重力波が検出された。
- でもそれは正式な観測開始よりも前だった。
- データの較正も完璧ではない。
- それでも「練習」にもなるし、ぜひ電磁波でも観測してほしい。
というものでした。
これでは全く歴史的な大発見の瞬間という感じがしませんよね?
さらに悪いことに、事前の取り決めにより、重力波観測装置と電磁波観測の全体をテストするため、「blind injection」という偽の重力波信号を人工的に(かつほとんどの研究者には知らせずに)注入する可能性があることが合意されていました。つまり、このイベントは人工的なものかもしれません。しかも、このメールには「練習」(exercise)という言葉まで登場します。
この状況では、このメールを信じる方が難しいのが分かっていただけると思います。
それでも、面白い可能性のあることにはチャレンジするという精神で、私を含む日本の研究グループは重力波の探査観測を行うことにしました。
重力波はどこから来たのか?
残念ながら重力波の到来方向は、主に南半球から観測できる領域で、かつ太陽にも近く望遠鏡が使える夜になるとすぐに沈んでしまう領域だったため、わずかな時間しか観測することができませんでした。
しかし、これが重力波と電磁波の初めてのマルチメッセンジャー観測となったのでした。
さて、この重力波検出の速報には、一つ重要な情報が欠けていました。それは、観測されたのがどのような重力波のシグナルだったのかということです。
中性子星の合体の場合は、一般相対性理論に従って重力波の波形を予想することができ、その波形から合体した天体の質量を推定することができます。

一方で、速報のメールには「バースト解析」で解析されたということが書いてありました。これは超新星爆発からの重力波など、事前に波形(重力波のテンプレート)が分からないときに使う手法です。
そのため、もしや銀河系内で超新星爆発が起きたのでは? という考えも頭をよぎりました。銀河系内で超新星が起きれば、肉眼で見えるほど明るく輝くはずです。このときは、念のため肉眼で空を確認しておこうという(今思い返すと冗談のようですが)話も飛び出すほどでした。