もちろん、これらの試験の難易度は高く、今でも試験合格を目指して何年間も浪人をしながら勉強する人も多い。元々、考試院はそういう公務員試験受験者のための「勉強だけに集中できる部屋」として作られた宿泊施設であった。

勉強だけに集中するための部屋なので、中は机とシングルベット、そして小さな冷蔵庫やクローゼットがやっと入るぐらいの広さである(写真参照)。部屋によって違うのだが、大体1.5坪=3畳ぐらいの個人スペースしかない。
国家公務員試験を目指すための施設なので、ほとんどの考試院は大学か国家公務員試験専門の予備校の近くにあるのも特徴だ。ソウルだと、ノリャンジン洞(鷺梁津洞)やシンリム洞(新林洞)などの有名予備校がある地域に考試院が多い。予備校に通う受験生たちがひたすら勉強だけに打ち込む毎日を送れるように作られている部屋で、都市部を中心に広く見られる。
このように勉強のためだけの住居だった考試院だが、1997年のアジア外貨危機を経て、不動産バブルの影響でソウルの賃貸価格が上がり始めると、受験に関係なく、「寝泊りができる安価な住宅」として注目を集めるようになった。
ワンルームマンションと違い、トイレ・シャワールーム・キッチンは共用であるため、水道・電気・ガスなどの水道光熱費が家賃に含まれていて、なおかつ保証金が必要なく月々の家賃も2~5万円と比較的に安いという点が、手頃な部屋を探していた地方出身大学生やソウルで仕事を始めたての新卒社会人の目に留まったのである。
ソウルの賃貸価格が上がるにつれて、一部の考試院は徐々に、学生だけではなく、低所得の社会人、就活生、留学生などが長らく住み着く場所へと変化している。最近はこの考試院も高級化が進み、東京などでも人気の「3畳ワンルーム」と同じように、トイレやシャワー室が一緒になった小型ワンルーム型も増えている(このタイプは考試院とホテルの合成語で「考試テル」と呼ばれたりもする)。
一方で、昔ながらの考試院は低所得者のための住居に変化して、いまだに多く残っている。