前編(菅義偉の派閥結成を、安倍晋三が後押しする「本当の理由」がわかった)では、遠回しに岸田批判を繰り返す安倍晋三の焦りについてレポートした。ここでは、岸田と安倍の対立を軸とした党内抗争に、「菅派結成」がどう影響を及ぼすか、証言をもとに明らかにする。
安倍の「負のオーラ」
だが、こうした安倍元首相の「威嚇」ともいえる岸田への攻撃は、陰りゆく自身の存在を誇示したい気持ちの発露でもある。
「森友・加計・桜の問題や、それに伴う公文書改ざんと国会虚偽答弁は、国民の政治不信に直結した。安倍さんの持つ『負』のイメージは解消されていない。オーナーとなった清和会とて、安倍さんが戻ってきたと手放しで歓迎する雰囲気ではない。とりわけ選挙を控える参議院組にとっては、『安倍さんが表に出てくるのは困る』というのが正直なところだ」(安倍派議員)

一方、岸田周辺の議員がこう語る。
「まずは安倍を潰したいというのが、岸田は考えている。ソフトには見えるが、意外なほど好戦的だ。まずは任期満了まで4年間のまっとうを目指すため、その間に麻生副総裁との関係を深化させ、麻生派との合併を果たしたい。麻生派の53人に岸田派の42人、それに谷垣グループを加えて再編し『大宏池会』が成功すれば、安倍派の95人を凌駕した党内最大派閥ができる」
岸田派が安倍派を抑えれば、もう怖いものなしなのである。
「安倍のことを鬱陶しいのは明白だ。無役のまま放置し、完全に中枢から遠ざけられていることが何よりの証明じゃないか」(同)