台本をもらったら、まずブレスの位置をチェック
トリニティーの声を吹き替えている日野由利加さんは『ER』の頃からずっと一緒で、他の作品でも何度か共演させていただいている役者さん。しばらくお会いしていませんでしたが、やはり今回も、その人の声を想像しながらできるという安心感がありました。

こういう大作のアドリブについては、昔に比べると厳しくチェックされるようになってきた気がします。以前はそれこそ何でもありで、やったもの勝ちみたいなところがあったんですけどね(笑)。
たとえば僕がキーファー・サザーランドの声を吹き替えた『24 -TWENTY FOUR-』では、脚本家の方がいらしている時に、了解を得てアドリブを入れたこともあります。「原語では気軽に呼んでいるので、日本語でも堅苦しくない言い方にしましょう」と、あえて愛称で呼んでみたり。現場で相談して直すことも結構ありました。
僕が台本をもらって最初にするのは、ブレスの位置のチェックです。日本語のブレスと英語のブレスは違うため、英語に合わせてしまうと日本語で吹き込む際にきれいに成立しない場合があるのです。そういう時は、ちょっと後の顔が映っていないシーンにセリフをこぼしてみるなど、上手く調整して収めるようにしています。
難しい漢字にはルビを振りますし、パッと見てわかるように自分のセリフの冒頭には印をつけます。ここが大事と思うところには波線を引いたりもしますね。あとはおおまかなタイムもメモしておきます。実際はタイムを見ながらやっている暇はないのですが、書いておくと「あと20秒くらいで始まるぞ」と意識できますから。これらの作業は人ぞれぞれで、皆さん自分なりにわかりやすく工夫していらっしゃると思います。