2021.12.19
# 節約

ドラッカーと密教に学ぶ、「儲け」と「高い精神性」を両立させる方法

人がボランティアをする理由を考える
大原 浩 プロフィール

仕事そのものが報酬

実は、一般の人々にも活用できる「煩悩(お金)と精神」の両立方法は、マネジメントの神様・ピーター・ドラッカーの教えの中に見つけることができると考えている。

現在の先進国でも貧富の差の拡大が問題になっており、貧困が現実に存在する。しかし、それでも失業保険や生活保護などの社会保障が古代、中世に比べれば格段に進歩しており「セーフティーネット」はそれなりに存在する。

少なくとも「(法に触れかねないような)心底嫌な仕事でも引き受けなければ餓死する」という状態ではないといえよう。

私がいつも感じるのは「嫌な仕事をこなしてたくさん稼いだ金で、好きなことをするのであれば、最初から少ない報酬で好きな仕事を選ぶべきではないか」ということだ。

その前提で考えると、ドラッカーの「知識社会では仕事そのものが報酬」だという言葉がよく理解できる。

古代、中世では、「働く」ということは「寝床と3度の食事を確保する」ということとほぼ同義語であった。しかし、現代では十住心論における第1段階の「異生羝羊心」=「煩悩にまみれた心」だけではなく、第2段階以上を満たすことができるのが「仕事」だと言える。

ドラッカーが「仕事そのものが報酬」と述べるのは、金銭による支払いだけではなく、「精神面の喜び」も報酬だということなのだ。

2018年11月25日公開「反強欲・反グローバル資本主義という潮流で読み解くゴーン事件」3ページ目「経営者報酬は従業員の20倍まで」で述べたように、ドラッカーは「強欲経営者」の異常な高額報酬も否定している。

自分の報酬を高くすることばかり考えている「強欲経営者」が「従業員の心をつかむ」必要がある「マネジメント」に秀でているはずがないとドラッカーは考えているのだと思う。

まさに、金銭的な報酬では無く「経営するという仕事」に「精神面の喜び」を感じる人々が経家者であるべきであり、それは一般の従業員についても同じだ。「金で動く人間」が、長期的な企業の発展に役立つとは到底思えない。

 

また、ドラッカーはこれからの社会での「非営利団体」の重要性を指摘しているが、ボランティアは、まさに仕事が報酬である。生活を支える仕事は別にあるが、その仕事だけで満足できない人々が増え、「精神面での報酬」を求める人々が主流になるということだ。そして、非営利団体が社会の大きな勢力になっていく。

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