客は何を求めているか
こうして西山さんは客の声を拾い、客が本当に求める形を模索し始めた。
手始めは、「里山選挙メニュー」だ。これは、客の食べたい料理を提案してもらうもので、客はメニュー名やイメージイラスト、希望価格、その料理への思いやこだわりを書いて、提出する。投票数が多いものや、客の思いやこだわりに料理長が共感したものなどを試作し、他のメニューとのバランスも考慮して決める。そこから生まれ、今や人気メニューとなっているのが、ハンバーグやユーカリ野菜のグリル、ミックスフライなどだ。

夜は居酒屋ではあるものの、「さくっと晩飯」の声にも応え、定食メニューを作ったり、当初はビールやサワー、ハイボールなど、居酒屋のスタンダードなドリンクばかりだったが、ワインの要望が多く、さらにボトルではなく、グラスでいろいろなワインを飲みたいという声に合わせて、国内外のワインを取り揃え、グラス提供を始めた。

西山さんは言う。
「ここに来るまで、ワインの知識はほとんどありませんでした。でも、ワインを選んだり、お勧めを聞かれるようになって勉強を始めたら、すごく面白くなって。料理長と二人でワインに合うつまみの開発をしている時間が楽しくて仕方がありません」
学んだ知識や新作のつまみをお客に披露すれば、彼らからのフィードバックがさらに勉強になるという。
「バブル時代に入居された、食経験の豊かな方がたくさん住んでいらっしゃって、最近のニューワールドのワインを出すと、面白がられたり、反対に店に置いてないものを教えてくれたり。そんな関係が築けるようなってから、カウンターの丸テーブルは平日でもお一人やご夫婦で来てくださる方でいっぱいになるようになりました」(西山さん)