「オール0円メニュー」?

地元野菜を使った料理や客の要望によって、「里山transit」のメニューは3年前の開店時から大きく変わった。大きな変化のひとつが、「all 0円」のメニューだ。「初めてのご馳走シリーズ」と書かれたこのページは、1歳未満の赤ちゃん向けの離乳食で、ひき肉の中華がゆやアジの和風ハンバーグなど、大人が見ても魅力的だ。それなのになぜ0円なのか。

試行錯誤のため、まだメニューは二つだけだが、人気は上々だそう。

「赤ちゃんが自分で選んでいるわけではないですから(笑)。大人はみんな好きなものを頼んで楽しそうに食べているのに、赤ちゃんだけ市販のベビーフードってなんだか違和感があって。それを代表に話したら、俺もやりたいってすぐに賛成してくれて、10月から始まったばかりなんです」(西山さん)

 

なぜ、行きたくなるのか

客の不満の声に耳を傾けて改善し、客の要望に応え、大事なことはきちんと伝える。こうしたやり方は、決して珍しいものではない。が、西山さんは話せない赤ちゃんや店に来られなかった客の心の声まで漏らさず聞き、店と地域とお客にとってオールウィンになることなら、どんな苦労もいとわない。

「里山transit」に客が気軽に立ち寄れ、気兼ねなく利用できるのは、店と地元客への愛に溢れた店長のたゆまぬ努力があるからなのだ。

毎日街を周る山万株式会社の社員、久須見さんは、自身もユーカリが丘の住民である。そんな久須見さんに、どんな時に里山transitに行くのかと尋ねた。

「家族や親戚と集まったり、市外から来た友達を連れて行ったり、夫婦で立ち寄ったり。一緒に行く相手はいろいろですが、ちょっとした特別感を求めているときに、行きたくなる店です」

客の「クレーム」を単なる否定ととらえず、そこからコンセプトを見直したからこその、今がある。