「動物虐待の問題を解決するためには、法律を整備して規制を強めることが必要です。でも、本当に大事なのは、人間の意識。動物のかわいいばかりを伝えて、人間の要求に答えてくれることばかりを望んでいるうちは、虐待は減らないと感じています」
『公益財団法人動物環境・福祉協会Eva』を主宰し、長年、動物愛護の問題と向き合い続ける女優の杉本彩さんはこういう。
第1回、第2回では、繁殖事業者や個人が引き起こしたおぞましい動物虐待事件について紹介したが、最終回の第3回は「気づかない動物虐待」について、杉本さんとともに考えてみたい。
ふれあい系の動物施設、本能を無視した展示
動物を虐待するのはごく一部のサイコパス(精神病質者)の仕業、と思っている人はいないだろうか? 確かに、人間社会には自分以外の人間に対する思いやりや愛情などの感情が著しく欠けているヘビーなサイコパスが存在していて虐待を起こすこともある。
しかし、第2回目の記事で取り上げた事件のように、仕事や家庭を持ち、一見「普通」と思われている人によって、ものが言えない動物たちが残虐な方法で殺害されたり、いたぶられたりする事件が起こっているのも事実だ。
そういった明らかな虐待事例でなくても、動物にとって苦痛な生活を強いられている場所がある。「あからさまな虐待」ではなくても、「気づかない虐待」「悪気がない虐待」「知らないが故の虐待」が増えていることに、杉本さんは危機感を感じるという。
「最近、“ふれあい系の動物カフェ”や“室内型のふれあい動物園”といった施設が人気で、新しい施設が続々と出てきていますよね。動物好きの人にとっては、好きな動物と触れ合うことができ、子どものための情操教育にもなると考えるようですが、本当にそうなのかなと思うんです。
なかには人と遊ぶのが好きな犬や猫もいますが、基本的に多くの動物は不特定多数の人と触れ合うことを嫌がります。たとえば、ナマケモノのように木の上で生活する動物もいます。そんな動物たちを人間と同じ目線で長時間展示して、次々とタッチしたりするのは、動物にとって間違いなく恐怖です。


ハリネズミにしても、本来は外敵から身を守るために毛が針のように硬く進化した動物です。従来たくさんの人に触れられることが大丈夫といった習性は持ち合わせていません。本来は飼育しにくい動物だと思います」(杉本さん)
