日米地位協定第9条2項には「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される」とあり、米兵は入国に関わる一切の手続きを免除されている。外国から直接、在日米軍基地に来ることで入国し、日本政府の出入国管理を受けないまま自由に外出できる。当然ながら検疫もなく、感染症を患った米兵を日本側がチェックする術はない。
これでは玄関を戸締りしても裏口を開けているのと同じことだ。感染症対策としては致命的な欠陥といえるだろう。
おかしな点はまだある。米兵らには日本の法律が適用されないのだ。日本政府が改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、緊急事態宣言を発令したとしても米兵とその家族、軍属は従う必要がない。

つまり、こういうことだ。
日本政府は、米軍基地の米兵がいつ、どこから何人来て、どのような生活を送っているのか皆目わからず、基地の米兵やその家族、軍属は日本の法令に従う必要もない。まさに基地は不可侵な領域なのである。
好むと好まざるとにかかわらず、沖縄は日米双方の生活圏となっている。日本の衛生当局が基地に立ち入ることができない以上、米軍は日本側に協力するだけでなく、適時適切な情報を提供する道義的な責任がある。
感染症は基地のフェンスに遮られることなく拡散する。新型コロナ対策を最優先させるのに、わずかなためらいも不要のはずである。
沖縄で起きている米軍の問題は、もはや沖縄県に任せるレベルを越えている。日米両政府が前面に出るべき局面を迎えたといえる。米軍の移動を一時的に停止させ、基地内で発生したクラスターを日米双方の協力によって封じ込める必要がある。
基地を沖縄に押しつける日本政府が、米軍基地の新型コロナまで沖縄に押しつけていいはずがない。それは結局、日本全体に災厄をもたらすのだから。