大和和紀さんが人として好きなキャラクター

――先生ご自身は、誰に近いですか?

だれにも当てはまりませんが、あえて言えば藤壺でしょうか。それは、私が母親であることがその理由です。親というものは、我が子を守るためなら嘘をつくし、なんでもできる。母として強く毅然と生きたところに、近いものを感じます。
一方、人として好きなのは朧月夜です。ハッキリしていて、わかりやすい。余談ですが、私スヌーピー(米コミック『PEANUTS』)の登場人物で好きなのはルーシーなんです。『はいからさんが通る』の北小路環もそうですが、ハッキリとモノを言う女性に憧れがあります。

朧月夜のセリフにしびれる! (c)大和和紀/講談社『あさきゆめみし 新装版』2巻より
『はいからさんが通る』の環は新しい価値観を多くの読者に教えてくれた (c)大和和紀/講談社 『はいからさんが通る 新装版』1巻より
 

――登場人物たちは現代人的な要素もありながら、平安時代を生きている。あの平安時代のリアリティについてお聞かせください。工夫していたことはありますか?

なんでしょうね……ストーリーを組み立てるプロセスにあるのかもしれませんね。まず、現代語訳を読み風景をイメージしてから、対訳本を読んでいました。そして最後に原文(古文)音読をしていましたね。自分の声で読み上げると、薄暗い中にぽわっと風景が浮かんでくるんです。

向こう(平安時代)の世界に行けちゃうんですよ。古文はわかりにくいですが、声に出すとなんとなくニュアンスがつかめてきて、作品をより深く理解できました。

また、音読をすると、京都を舞台にした作品ということもあるのか、空気が湿気っぽいことにも気付きました。その靄(もや)や霞(かすみ)のようなものを払いながら漫画にしていったのです。私はカラッとした北海道で生まれ育ったので、湿気の存在に気付き、それを飛ばしたところが、皆さんにも読みやすくなったのかもしれませんね(笑)。

◇インタビュー2回目の後編大和和紀が語る『あさきゆめみし』連載の14年「合間にエアロビクスに行っていました」では、15年近くに及ぶ連載期間のことを詳しく伺っていく。
 

大和和紀『あさきゆめみし』新装版 全7巻
大和和紀画業55周年記念&Kiss創刊30周年記念企画
大和版「源氏物語」、の新装版全7巻で刊行。

第1巻 山岸涼子氏インタビュー収録 12月13日発売
第2巻 よしながふみ氏インタビュー収録 12月13日発売
第3巻 角田光代氏解説収録 1月13日発売予定
第4巻 三浦しをん氏解説収録 1月13日発売予定
第5巻 青池保子氏インタビュー収録 2月10日発売予定
第6巻 蜷川実花氏インタビュー収録 2月10日発売予定
第7巻 大和和紀氏自著解説収録 2月10日発売予定