シリコンバレーで「ストア哲学」が大ブームを巻き起こしている「意外な理由」

技術の「加速」のなかで

ITの最先端をいくシリコンバレーでは、マインドフルネスなどと並んで、「ストア哲学」が大ブームを巻き起こしてきた。なぜ2000年前の思想が、シリコンバレーで…? その背景について、『裏道を行け ディストピア社会をHACKする』(講談社現代新書)を上梓した作家の橘玲氏が解説する。

テクノロジーが問題を引き起こしている

1982年生まれのカル・ニューポートは、大学でコンピュータサイエンスを教える傍ら、2007年からStudy Hacks(スタディハックス)というブログを書きはじめた。最新のテクノロジーを活用し、どうすればより生産性が高く価値ある仕事ができるかを論じたブログは熱心な読者を獲得し、何冊もの本を出すことができたが、やがてニューポートは、そのテクノロジー自体が問題を引き起こしていると考えるようになる。

ここまでは多くの論者が気づいていて、ライフハック系の本には「デジタル休息日」をもうけることなどが提案されている。だがニューポートは、そんな対抗策ではまったく役に立たないという。なぜなら、「デジタル・ツールは使わずにいられなくなるように設計されている。しかもその行為依存を助長する文化的な圧力はすさまじく、小手先の対処法ではとうてい歯が立たない」からだ。

〔PHOTO〕iStock
 

SNSによる超常刺激に対処するには、「オンラインで過ごす時間を容赦なく削り、ごく少数の価値ある活動に集中する」しかないとして、ニューポートはこれを「デジタル・ミニマリズム」と名づけた*1。

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