ここまでケチだとは思わなかった
結婚した当初、義行のケチっぷりを仲の良い友達にこぼすと、誰もが口を揃えていった。
「それって、おつきあいしていた時に分からなかったの?」
結婚相談所は、言わずとしれた結婚を目的にした男女が出会う場所で、結婚をするには効率的だ。ただ、相談所にはいくつかのルールがあった。
お見合いを終えてまず入るのが、“仮交際”。これはお人柄を見る期間なので、複数と交際をしていてもいいし、新たなお見合いをしてもいい。その中の1人と、結婚に向かうことを決めると“真剣交際”に入る。この時は1人と向き合うので、複数交際している場合は他の人には“交際終了”を出す。
また、“3か月ルール”というのがあり、仮交際期間にしろ、真剣交際期間にしろ、3が月のうちに、その相手との関係をどうするかの結論を出さなくてはいけない。お互いが「もう少し付き合っていたい」というのならその限りではないのだが、片方が、「真剣交際に進みたい」とか、「もう結婚したい」と思っているのに、相手がそこまでの気持ちがなく、結論を先延ばしにする場合は、そこで交際終了。引き伸ばして半年後、1年後に交際がダメになった場合、待たされた方の時間が無駄になってしまうので、設けられているルールだ。

限られた期間の付き合いでは、相手の本質が見抜けないことがある。義行が無駄なお金を使わないタイプなのは薄々感じてはいたが、ここまでケチだというのは、結婚するまでわからなかった。婚活中のデート代は、全て彼が払ってくれていたし、毎月決まった額の貯蓄をしていて相当額の貯金があると言っていた。ケチというよりは、堅実なタイプだと美枝は思っていたのだ。
ただ今思えば、デート中の会話には常にお金の話が出てきていた。例えばイタリアンレストランに入った時のこと。メニューをじーっと見つめながら、こんなことを言った。
「パスタの原価率って知ってる? 100円もかかっていないんだよ。それなのにアラビアータが1100円しているでしょう? だったらこっちのハンバーグセット1100円の方が、断然原価率が高い。こういうところでパスタを食べるのは、バカだね」
その時、美枝はパスタを食べたいと思っていたが、義行に合わせて一緒にハンバーグセットを頼んだ。
そして、出会ってから5か月後に成婚退会をし、その2か月後に入籍をしたのだが、結婚してからは、外で食事をすることはほとんどなくなった。