入国から10日で「不審死」…まだまだ知らない「入管」の深すぎる闇

ウィシュマさんだけではなかった
織田 朝日 プロフィール

筆者が彼に会った時点で、彼は1年以上も東京入管に収容されている状態であった。彼もニクラスさんと同様に難民だったため、帰国できずにいたのだが、「入国拒否の理由をいっさい教えてもらえない」と怒りを露にしていた。入管の性質がニクラスさんの事件からまったく改善されていない現在、彼がニクラスさんのような死を迎えないという保証は、決してない。

そもそも「入管施設」とは何なのか?

「入管施設」とは、ビザのない外国人を送還する準備のために一時的に留め置く施設である。つまり本来、長期収容のためにつくられたものではない。しかし近年は、本人が自ら帰国する意思を持たせるために、何年間も無期限に留め置く傾向がある。長い人では8年以上、女性でも5年間も収容されるケースがある。

危険な母国に帰ることのできない難民や日本人の家族がいる人は、何年収容されようが日本を出ることはできず、いつ解放されるのかわからないストレスを抱えながら、ただただ耐え忍ぶしかない。

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最も深刻な問題が、職員による暴力や暴言だ。帰国できない事情があるとわかっていながら、「帰れ」と高圧的に迫りつづける。3度の食事は出されるもののひどい内容で、栄養価が保証されたメニューではなく、「料理に髪の毛や虫が入っていた」「出された魚が腐っていた」という被収容者からの証言も多い。

同時に、医療ネグレクトも深刻である。施設内で病気になっても、外部の病院に連れて行ってもらえることはめったにない。過去に入管施設で命を落とした人たちの多くは、この医療ネグレクトが原因であるといわれている。

この入管の収容の在り方について、2020年9月にジュネーブにある国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は、入管当局による長期収容を「恣意的拘禁で国際法違反」とし、日本政府に是正を求めている。

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