中国・中央経済工作会議の中身から「習近平体制転覆の可能性」が見えてきた

中国経済の目も当てられない実情
朝香 豊 プロフィール

地方公務員の所得が激減中

実は現在、中国の地方財政は火の車である。これは地方財政の主力であった土地使用権の販売が見込めなくなったためである。

例えば、最も土地使用権の販売に依存していた仏山市においては、通常の税収等に対して土地使用権の販売は180%(2020年実績)であった。すなわち税収などの普通の収入が100だとすると、土地使用権の販売による収入は180だということになる。

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不動産をめぐる状況が大きく変わり、今後この収入が計算できなくなったわけだが、こうした事実を見た場合に、地方財政の置かれている状況がとてつもないものであることがわかるだろう。

地方財政は大きく落ち込まざるをえない。それを幾分か中央政府が支えたり、地方債の発行条件を緩和して、その落ち込みの度合いを少しでも緩和したいというのが実際なのである。これは西側の基準では「積極財政」とは呼ばない。

「中央経済工作会議」では積極財政どころか消極財政的な「コスト削減」も打ち出しているのだが、それはこうした厳しい財政事情に合わせるために激しいコスト削減が避けられないことを認めているのである。

日本ではあまり知られていないが、地方政府は公務員の給与の削減に相次いで乗り出した。賞与や手当を次々に廃止し、公務員の所得は2〜4割引き下げられたと言われている。中には5割以上の削減になったところもあるようだ。

 

江西省の徳興市や南昌市のように、すでに支払った賞与について返還を求めることまで行っているところもある。財政的には最も余裕があるはずの上海市まで公務員給与の削減に手を出しているのである。

つまり、自然に任せていてはとてもではないが財政運営ができない中で、従来よりも財政規律を緩めるという意味での「積極財政」なのであり、従来よりも財政規模を引き上げるようなことは考えていないし、そんな処置は現実的に取ることもできないというのが中国の実際の姿なのである。

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