中国・中央経済工作会議の中身から「習近平体制転覆の可能性」が見えてきた

中国経済の目も当てられない実情
朝香 豊 プロフィール

金融緩和策にも限界がある

さて、財政政策の本格的な拡張が実際には取りえない中で、「中央経済工作会議」は金融政策に頼ることも打ち出している。だが、現状のショックを和らげるために金利の引き下げができるかといえば、その余地は事実上ない。

アメリカは国内のインフレ傾向に合わせて国債などの資産購入をどんどん減らしていく「テーパリング」に動いており、ドルが早晩利上げに向かうのは必然である。中国は国内のインフレを抑制するために元高誘導を行っているが、ドル金利が今後上昇する見通しの中で高い元を維持するためには金利の引き下げができないのである。この点で金融緩和策にも限界がある。

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「中央経済工作会議」は、「共同富裕」のためにまず「パイを大きくする」ことを重視する方針を打ち出した。中国は鄧小平の「先富論」から習近平の「共同富裕」路線に移ったはずだったのだが、「パイを大きくする」を分配より重視するということは事実上「先富論」へ先祖返りしたと考えるべきである。

アリババやテンセントがそれぞれ1000億元(1.7兆円)の資金を「共同富裕」のために差し出すなど、儲かっている民間企業から富を引っ張ってくるような政策が民間の稼ぐ力を奪っていくことに目が向いた結果であろう。

 

「国進民退」(国有企業による経済を大きくして民営企業による経済を縮小する路線)ではパイを大きくすることはできず、「第三次分配」(給与の支払いによる分配、租税を集めて社会保障などを通じて行う分配とは別の分配で、金持ちや民営企業が寄付などをすることによって実現される分配)を推進させることによって稼げるはずの民間の力を衰えさせることになる。

こうした点の見直しが進められたとも言える事態で、習近平にとって大きなダメージになっているのは確実だ。

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