いちごのショートケーキが、「日本人の好み」にマッチしている「納得の理由」

むしろ「日本人のため」に開発された
吉田 菊次郎 プロフィール

冷蔵庫が普及して、一気に広まる

では、その発祥や名称はさておき、このお菓子が本格的に広まっていったのはいつ頃か。これについては、生クリーム自体が潤沢に供給され出してからのことで、それは戦後もしばらくたった頃のこと。

何よりこうした日持ちのしないものを安心して販売するにあたっては、冷蔵庫、冷蔵ショーケースの普及が不可欠な条件となってくる。それがお目見得するのがようやく昭和30年頃のことで、これを境としていわゆるショートケーキを含めた生菓子類が、われわれの生活に一気に広まりなじんでいったのである。

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そして今や、ショートケーキは、プリン、シュークリームと並ぶ定番中の定番として、わが国の洋菓子を席巻するにいたっている。

バースデイやクリスマスはもとより、近頃はひなまつりでさえも、この種のデコレーションケーキ一色の商戦となりつつある。ここまで浸透すれば、もはや日本の銘菓の名に恥じぬ不滅の名品といっていい。

それにしても、「プリン」は英国のプディングのなまった音であり、「シュークリーム」はフランス語のシューなる言葉と英語のクリームの合成語、「ショートケーキ」は述べたごとくの語源不明。御三家がそろいもそろって勝手な解釈の和製外国語というのもおもしろい。まこと、お菓子な国ニッポンか。

つまらぬことにこだわるな、お菓子なんて、食べてうまけりゃいいではないか? いや、ごもっとも。

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