"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
1906年のこの日、カナダの技術者レジナルド・フェッセンデン(Reginald Aubrey Fessenden, 1866-1932)が世界初のラジオ放送に成功しました。
ケベック州・ミルトンで生まれたフェッセンデンは少年時代から無線技術に興味を持ち、カナダで教育を受けたのちにアメリカでエジソンのもとで助手として働きながら電気技術を学びました。
残念ながらエジソンの工場は財政難に陥り、優秀な業績を残していたフェッセンデンを含む多くの技術者が解雇されてしまいましたが、フェッセンデン自身は合衆国気象局で無線技術を天気予報に応用するなど活躍します。

1900年、無線を使用した音声送信の実験に成功したフェッセンデンはこの技術を活かして周囲の広い範囲に音声を送信する、いわゆるラジオ放送の実現に向けて試行錯誤を重ねるようになります。
奇しくも1901年にマルコーニが大西洋横断無線実験を成功させたこともあり、彼のモチベーションはどんどん上がっていきました。
そして、1906年の12月24日、フェッセンデンはマサチューセッツ州にある自宅から周囲に向けて「世界初のラジオ放送」を流しました。この放送は彼の自宅から8km離れた船の上でも明瞭に聞こえたという記録も残っています。
旧来の無線通信といえばもっぱらモールス信号だったわけですが、この時フェッセンデンが流したのは彼自身の手によるバイオリンの生演奏や聖書を引用した言葉などで、これを聞いた人は相当驚いたのではないかと思われます。
この世界初のラジオ放送の成功以降、アメリカ全土でラジオによる試験放送が行われるようになり、1920年には当時行われていたアメリカ大統領選の結果がラジオで放送されるなど、一躍国内の主要メディアになっていきました。
その後もアメリカの技術者アームストロングによってFM放送が開発されるなどラジオ技術の開拓は続きましたが、時代はメリエスやグリフィスによる映画や日本の高柳健次郎らによるテレビなど、映像を伴うメディアへと移り変わっていくこととなります。
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