性別、人種、年齢とかで区別されない「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」その驚きの世界
『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』(DID)は、1988年にドイツで考案され、その後世界各国に広がった、体験型のエンタテインメントだ。「純度100%の暗闇」環境のもとで、対話を通じて新たななにかが「見えてくる」という現象が起こるという。その体験を、セクシャルマイノリティを公表し、女性間風俗店を営む橘みつさんが著した。
「鮮やかな暗闇を体験しに行こう」
海の沖合、エレベーター、すし詰めのライブ会場の真ん中あたり、停車区間の離れた電車…そういう「すぐに逃げられない場所」が、わたしは怖い。こういった性質を「広場恐怖」というらしい。嫌になったときにすぐ離れられないかも、と思うと冷汗が出はじめ、呼吸が乱れ、パニック状態に陥るまで5分もかからない。
そんなわたしでも、好んで何度も足を運べる空間がある。「純度100%の暗闇」と呼ばれるそこでは、目で見るよりもっとハッキリと、”すべて”が姿を現してくれるからだ。
2020年にオープンしたアトレ竹芝は、テーマごとに分かれた3つの棟がある。その内の「体験・体感」がテーマのシアター棟1階で、暗闇はひっそりわたしたちを待っている。
『ダイアログ・ミュージアム 対話の森®』は、体験を通じて参加者が「他人との違い」について自然と考え込んでしまう、不思議な空間だ。
2021年12月現在は、ミュージアム内の『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』では全盲の人と同じ感覚を、『ダイアログ・イン・サイレンス』では聴覚障害の人と近い状態を体験することができる。
そう聞くと、社会課題への意識が高い人ばかりが足を運ぶところだと思うかもしれないけれど、そんなことはない。面白いアトラクションとして参加したつもりでも、終わった後には参加者の心にちいさな「きっかけ」を生みだす。
この感覚が心地よくも奇妙で、大学時代から何度も足を運んでいた。その頃、「ダーク」は外苑前で開催していたのだが、物件との兼ね合いで一時閉館し、アトレ竹芝のオープンと共に再出発したらしい。