こんにちはーようこそ、と柔和な笑みで受付の人が迎えてくれる。
張り付いた営業スマイルではなく、誰か・何かに配慮したようでもない、自然なトーン。この空気がたまらなく心地よいものだったな、と思い出す。
今回は、ダイアログシリーズのことを何も知らないという友人を誘っていた。社会的な意義とか、何が素晴らしいかとか、事前に話したいことは山ほどあった。でもそこはグッとこらえて、伝えたのは一言だけ。
「”鮮やかな暗闇”を体験しに行こう」
ミュージアムに入った瞬間、友人の存在感が消える。どんな雰囲気で居ればいいか迷ったら、その場の空気を感じ取って馴染ませるまで、余計なことは言わないようにするクセがある人だ。

空気感を壊さないように…そんな気配を背中で感じ取りつつも、フォローさえせずに受付の人と外苑前の思い出話に花が咲いた。友人ならではの雑さって、こういう場面で出る。
「外苑前で開催していた頃から参加してきて、今日でもう6回目くらいです」
「まぁ、その頃からいらしてくれていたんですね! おかえりなさい」
おかえり、と言ってもらえる場所が外にあるって素敵だ。この日の受付の人と過去にも話したことがあるかはわからないけど、場所が変わっても、人が違っても、同じものが待っている。そんな安心感って、わたしが経営する女性間風俗店『リリーヴ』でお客様に感じてほしい「対話の時間」そのものだったりする。
「こちらのかたも、以前からですか?」
友人に笑顔を向けながら、自然と輪に入れる。誰かだけを置いてけぼりにしない、スムーズなコミュニケーションが上手だなぁ、としみじみ感じる。