2021.12.25
# エンタメ

全盲の人は、こんな風に世界と向き合っている…「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の衝撃

橘 みつ プロフィール

「俺、暗闇から出たあとに顔を合わせて話しているとき、タエさんを”自分とは違う世界の人”って意識してしまう感じが、さびしかった。同じなんだって言い聞かせようとしちゃう感じが戻ってきたっていうか、うまく言えないんだけど」

わかるよ。見える人が当たり前の世界では、見えない人の存在が際立ってしまうもんね。だから、どうしても垣根が生まれてしまう。それが「差別」か「配慮」かで違いは大きいけれど、暗闇で感じられたような”対等さ”って、極論では得られないんじゃないかとも思う。それを「さびしい」と表現した彼の感想に、何度もうなづいてしまった。

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そして、普段からマイノリティのことを考えているわけでもない人が、こちらから何も言わずとも同じ気持ちを持っていたことが、たまらなく嬉しかった。

マイノリティの話題を扱うとき、どうしても腫れ物に触るような雰囲気になることが多い。わたし自身、性的マイノリティに関する活動をする中でずっと課題に思っていたことだ。自分の理解が及ばない相手に接する上で、失礼の無いようにすること・傷つけないようなコミュニケーションをすることが第一なのは間違いない。

でも本当にフラットなコミュニケーションって、本来は「何も意識しないこと」じゃないかと思うし、今回の体験はその重要さと難しさをいっそう強く感じさせてくれた。その人の世界に入って初めて見えるものがたくさんある。そして、その人の世界に入れないことのほうが、世の中にはずっと多いのも事実だろう。

だからこそ、多様性の核は「わかりあえないと知ること」にあると言われているのだ。つまり、わかりあえなくたってわたし達はそれぞれ存在している、存在し続けていく。

知ることのできないはずの世界に迎え入れてもらう経験をしたこと、わかるはずもなかった感覚がわかったこと、そしてやっぱりわからなくなってしまうと理解したこと。ダイアログ・イン・ザ・ダークにわたしが何度も足を運ぶのは、この感覚をなるべく自分の中に留めておきたいからだ。

あなたもぜひ、純度100%の暗闇に包まれてみてほしい。できれば、そこで「見た」もののことを聞かせてほしい。

「わかりあえないことをわかりあう」体験を、暗闇にいるサンタはわたし達にプレゼントしてくれた。サンタって、本当はちゃんといるんだ。

赤い服じゃなくても、トナカイに乗っていなくても、人によろこびを届けられる存在をサンタって呼んだっていい。わたしも、誰かのサンタになれるだろうか。去年までよりちょっとだけ、イルミネーションが綺麗に見える気がした。

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