2021.12.29
# AI # 読解力

藤井聡太✖山中伸弥「何のために努力するのか、それを忘れてはいけない」

藤井聡太×山中伸弥 スペシャル対談(9)
分野は違っていても、過酷な競争の世界で最前線で前人未到の挑戦を続ける藤井聡太棋士と山中伸弥教授。彼らの日常の準備、学び方、メンタルの持ち方、AIとの向き合い方…。日々努力を続けるすべての人へ贈るメッセージを『挑戦 常識のブレーキを外せ』からピックアップしてお届けします。

AIをどう活用していくかが問われる時代

山中    将棋は組み合わせが無限にあるわけじゃないですか。とくに最初のほう。詰めになってきたら指すべき手が決まっていても、序盤は無限に可能性があるから、確かに教えるのは大変だと思うんですよ。

だって囲碁なんて、最初どこに置いてもいいわけですよ。どうして端っこのここから打ったらよくて、他で打ったらだめだと言えるのか。誰か証明したのか。

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藤井    ええ、そうですね、難しいですけど。あらゆる局面において、形勢を左右する因子というか要素というのがあるので、それに着目して形勢判断することが基本的で大事なことだという気がします。

山中    将棋はもう最初から兵力が限られた陣地の中にちゃんと成立していますからね。

藤井    初形において、たとえば大駒の働きということに着目して、じゃあその大駒の働きを高めるにはどうすればいいかという点を考えた手は、7六歩だったり2六歩であったり、そういう手にたどり着くわけです。そういう考え方が基本になるのかなという気がします。

山中    僕は囲碁をこの何年かやっていて、いまだに囲碁の解説書を見ても「なぜそう打つか」をちゃんと教えてくれているものはありませんよ。「どうしてこの端っこのほうに置くんですか」と聞かれても、「昔からそうやから、そうしろ」と言ったほうが楽じゃないですか。一手一手教えるなんて面倒くさいことやってられない。

人間だったら面倒くさいことも、それこそAIだったら「ここはこう指したほうが確率96パーセントで有利」とかなんとか一手一手教えてくれるようになりませんか? そういう「AI先生」が登場したら、僕は絶対強くなると信じているんです。今はすばらしい師匠とすばらしい本に出会ってないだけ。だから囲碁も3級から強くならない、と他人のせいにしています(笑)。

藤井    将棋や囲碁だと、序盤の指し方、打ち方は今まで「感覚」「直感」といった言葉ですまされていました。AIがそれを評価関数、そういう膨大なパラメーターで評価するようになりました。ただ、それだと数値化はできても、まだ人間に理解できるものにはなっていません。だから、それも多少直感的にわかりやすいものになればいいなと思いますけど。

山中    藤井さんの時代にはAIによって、強くなる方法論が確立されるかもしれませんね。そうしたら、みんな強くなって困るのかな?

藤井    いえいえ。

山中    そういう了見の狭いことを言うたらだめやね。みんなが強くなって、さらに自分も強くなる。

藤井    はい。そういったソフトをうまく活用することなどで、将棋界全体としても、どんどん強くなっていく可能性は高いんじゃないかなと思います。

山中    それは、これから藤井さんがやろうということなんですか?

藤井    それについては、まだ自分もいろいろ取り組んでいる段階です。AIの登場などによって、おそらく少しずつ開けてくるということになるんじゃないかなと思います。自分もその辺りを何とか模索しながら、しっかり方向性を見定めてやっていきたいなと思っています。

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