日本は沈まずとも日本政府は? 安倍元首相「国債安全発言」を検証する

タイタニックも沈むと誰も思わなかった

日本はタイタニックではないが日本政府は?

安倍元首相が、12月15日の都内の講演で、「日本がタイタニックなら国債を買う人はいない」と発言したと報道された。

私は思わず耳を疑ったが、この報道の内容が正しいとすれば非常に残念なことだ。

by Gettyimages

昨年9月11日公開「十分ありうる『安倍首相大復活の日』これから何が起こるのか」で述べたように、第2次安倍政権は、外交を中心に素晴らしい成果を残した。

特に、米国が離脱した後、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)」を残りの国々の強力を得て成立させた手腕は、明治以降の星のごとく煌めく政治家たちの業績と比べても特筆すべきものだと考える。

実際、2月18日公開「英国は再び日本の盟友となるか? これだけあるその可能性、メリット」だけではなく、台湾や9月29日公開の「習近平が目指すのは朝貢貿易か? 中国TPP加盟という暴挙を認めるな」で述べた共産主義中国、さらには日本が戦略的放置政策をとっている韓国までもが、「TPP11へぜひ入れてください」と秋波を送ってくるほどの人気を誇っているのだ。

だが国内政治、特に経済面において世間で「アベノミクス」と呼ばれている政策は、後述するように、悪夢の民主党時代のような「邪魔」をしなかったから成功したに過ぎない。

「黒田バズーカ」という言葉を生んだ、日本銀行との二人三脚による超金融緩和が日本経済回復にどの程度の好影響を与えたのかは定かではない。むしろ、11月30日公開の「習近平ですら吹っ飛ぶインフレの脅威…2022年、世界『大乱』に立ち向かう7つのポイント」で述べた、インフレ時代からデフレ時代への転換を迎える今となっては、超金融緩和政策は負の遺産と言ってもよい。

だから、財務省の矢野康治事務次官の警鐘は素直に受け入れるべきなのだ。もし、この警告を受け入れ、財政・金融政策を改善しなければ「日本政府」(日本そのものではない)がタイタニックのように沈没する可能性はかなり高いと言える。

タイタニック号は当時最新鋭の豪華客船であり、乗船希望者があふれていた。多くの人々が乗船していたからこそ大惨事になったのである。

 


また、10月25日公開の「日本は外国に借金していないからデフォルトしないというのは本当か?」で述べたように、事実上紙くずとなった戦前の国債も多くの日本国民が購入していたからこそ大打撃を受けたのだ。

この記事にもあるように当時の政府も、巷に流布していた不安を打ち消すために「国債は絶対安心」というプロパガンダを行っていた。冒頭の言葉を裏から読めば、「日本政府はタイタニックだから、多くの人々に国債を買わせようと必死だ」ということになる。

「タイタニック号の乗船切符を買わなかった人々は惨劇にも見舞われなかった」のだということをよく考えるべきだと思う。

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