誰もタイタニックが沈むとは思っていなかった
最新鋭の客船として鳴り物入りで就航したタイタニック号が沈むなどとは誰も考えておらず、乗客が殺到した。逆に乗客の多さが惨事につながったのだ。そして、前記「日本は外国に借金していないからデフォルトしないというのは本当か?」で述べたように、戦前も「みんなが国債を買っていた」のである。
相場格言に「大衆は常に間違っている」というものがある。バフェット流でいえば「人々が熱狂しているときには慎重に、逆に人々が恐怖におののいているときには大胆に」ということである。
つまり、投資の正しい手法、正しい経済政策は、「多数決」や「大衆心理」では決して得ることができないということだ。
バブル崩壊というものは、まさに「みんながタイタニックに乗っているから僕も!」という人々が飽和状態になった時に起こるものである。
結局、「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言がすべてを物語っているが、戦前のように「国債は絶対安心だからみんなで買いましょう!」というプロパガンダが執拗に行われる中で、「花のある裏道」を自分自身の判断で見つけることが大事だ。
また、国家の少数エリートが一国の経済をコントロールできると考えるのは共産主義(全体主義)である。アダム・スミスも「国家は公正な競争を妨げる独占を排除する審判」に徹するべしと述べている。
国家というのはあくまで、「公明正大な審判」であるべきであり、ゲームのプレイヤーでもチームの監督でもない。審判であるはずの国家が、監督を気取って色々な指示(政策)を出し、時にはプレイヤーにまでなってしまうことが、日本に限らず世界の先進国経済混迷の原因ともいえよう。
アベノミクスの最大の成果は、悪夢の民主党とは違って復活し始めた日本経済の成長を邪魔しなかったということだ。決して安倍政権の政策が、日本経済をどん底から救ったわけではないのである。