2022.01.09

「鎌倉殿の13人」、小栗旬演じる“北条義時”は将軍殺しの黒幕なのか?

これから起こる「裏切り」の数々
加来 耕三 プロフィール

もっとも、これも時政の考えた筋書の一つでしかなかった。万全の武備をすでに固めていた時政は、まさか出てはこないだろう、と思いつつ、

「改めて相談したいことがござる」

能員を名越(なごえ 現・鎌倉市南東部)の自邸へ招いた。ところが、先方はやってきたのである。

能員、どうする気だ)

時政でさえ、能員のために思ったろう。

考えられない迂闊(うかつ)さで、悠暢にもノコノコ出向いてきた能員は、待ちかまえていた天野遠景(あまの・とおかげ)、仁田忠常(にった・ただつね)の二人に取り押えられ、庭に引き落とされて首級をあげられてしまう。

 

能員は彼なりに、思慮したに違いない。自分たちの進めている北条氏追討の準備が、万々整うまでの間、時政に無用の警戒心をもたせたくない、と。そう思って誘いに乗ったのだろうが、相手を知らないにもほどがある。この劇の、そもそもの勧進元は時政その人であった。

時政が計画した通り、主人を失った比企一族はパニックに陥ってしまう。作戦らしきものも立て得ぬまま、あわてて戦支度はしたものの、義時(41歳)とその子・泰時(21歳)を将とする北条勢に攻め込まれ、比企一族は滅亡した。ときに時政は、66歳であった。

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