年金官僚と戦ったジャーナリストが、審議会入りして「解任」されるまで

【前編】最後の仕事は「議事録改ざん」の告発だった
岩瀬 達哉 プロフィール

「役所が音源を保有していないはずがない」

その経緯を知るものにとって、事業企画課の人を食った説明は、さすがに黙認するわけにはいかなかったのだろう。

Photo by GettyImages
 
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委員である株式会社政策工房社長の原英史氏は、「そんな説明はまったく理解できない」として、こう尋ねたという。

「音源は事業者のもので、事業企画課でもっていないというのはおかしい。役所が音源を保有していないなど考えられないことだ」

元経済産業省のキャリア官僚である原委員の疑問は、まったくその通りだ。

これに対し事業企画課は、壊れたレコードのように先の稚拙で空疎な説明を繰り返しただけだったという。

原委員の指摘にもかかわらず、増田部会長は「(議事録の)扱いは任せてほしい」と述べ、この日の部会を終了した。

かりに、事業企画課の手元に音源がなかったにしても、議事録作成の実務責任者である同課が、事業者から取り寄せればいい。それだけの話である。

仕事の発注者と受注者との力関係から言っても、音源の提出を求められ拒否する事業者などありえないからだ。

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