年金官僚と戦ったジャーナリストが、審議会入りして「解任」されるまで

【前編】最後の仕事は「議事録改ざん」の告発だった
岩瀬 達哉 プロフィール

根っこは個人情報の「中国流出問題」

日本年金機構による「議事録(案)」の改竄と、それを糊塗しようとしている事業企画課の目的はなにか。

「第56回部会」でのわたしの質問に対する機構の田中義高・企画調整監(現・厚労省社会・援護局福祉人材確保対策官)の説明を、「議事録(案)」から消すことにあった。

Photo by GettyImages
 
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その日、わたしは、国民の個人情報の入力作業を中国に再委託していたSAY企画の契約違反を取り上げ、機構の水島藤一郎理事長の3年前の国会答弁が事実と矛盾すると指摘し、再度の説明を求めている。

田中企画調整監は、この質問を奪うかのように横から口を出し、躍起になってこうまくし立てたのである。

「SAY企画は、この業務をはじめるにあたり、最初から氏名とフリガナを申請書から切り出すトリミングシステムなる装置を作っていて、すべての申請書をそのシステムにかけたのち二情報を中国に送っていた」

この説明は、輪をかけてこれまでの国会答弁と矛盾する。水島理事長は、業務をはじめる前ではなく、業務をはじめたのちにトリミングシステムを作ったと説明していたからだ。非常に驚いたものの、議事録が作成されたのち、もう一度質問しようと思っていたところで、「議事録(案)」から田中企画調整監の発言はそっくりそのまま削除され、当日語っていなかった長々とした説明に書き換えられていたというわけだ。要するに、急場凌ぎで誤魔化したものの、墓穴を掘ってしまったことに気づき、あとで追及されたらまずいと意図的改竄をおこなっていたということになる。

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