年金官僚と戦ったジャーナリストが、審議会入りして「解任」されるまで

【前編】最後の仕事は「議事録改ざん」の告発だった
岩瀬 達哉 プロフィール

繰り返された虚偽答弁

ここで少し話は横道にそれるが、「議事録(案)」の改竄が、単に作成上の問題ではなく、改竄までせずにはいられない「深刻な不正」と結びついていることを理解するため、SAY企画の中国への再委託問題で、年金局や機構がいかに国会で虚偽答弁を繰り返してきたかを見ておくことにしよう。

Photo by GettyImages
 
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「扶養親族等申告書」は、年金受給者の源泉徴収税額を計算するのに必要な書類であり、提出が義務づけられている。ここには年金受給者と配偶者だけでなく、扶養している父母や子供など家族全員の氏名、フリガナ、生年月日に加え、同居の有無や、彼らの年間所得見積額などのほか、マイナンバーまで記載することになっている。

SAY企画は、機構との契約に反し、この申告書を中国の関連企業に再委託し、中国で入力作業をおこなわせていた。その事実が3年前に明らかになり、社会問題になった。国会でも集中審議がなされたものの、水島理事長は「個人情報は流出していない」との答弁を繰り返すことで、個人情報流出の疑念をおさめた格好になっている。

流失していないとする根拠は、申告書から「氏名とフリガナ」のみを切り出す、トリミングシステムというものであった。

水島理事長の説明によれば、SAY企画は、同申告書をOCR(光学式文字認識装置)で読み取らせていたが、作業をはじめたところ、「漢字氏名及び仮名氏名」の読み取り精度が低かったため、この二情報だけを切り出すトリミングシステムを作って中国で入力させていた。そしてその入力データと、OCRで読み取ったデータとをドッキングさせ、源泉徴収税額を自動計算するプログラムとして完成させていた。したがって、マイナンバーなどの個人情報は流出していないというものだった。

後編に続く

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