WHOは経口中絶薬を「安全な方法」と認定

日本産婦人科医会は、経口中絶薬は“念のため”に入院施設のあるところのみで取り扱えるようにすべきだとしていますが、海外ではすでに安全と認められている薬の処方を限定的なものにする姿勢も問題視されています

ここで経口中絶薬の歴史を振り返ってみたいと思います。
海外の先進国では1960年代に女性運動の結果として避妊ピルが合法化されていき、「ピル」を獲得した海外の女性たちは次に「中絶」を獲得目標にしました。その結果、1970年代には次々と中絶が合法化されていき、違法の堕胎師が行っていた金属製の器具でかき出す「搔爬(そうは)法」ではなく、より安全な、ストロー状の器具で吸い出す「吸引法」が導入されていきました(搔爬法に関する詳細は後述します)。

そして1980年代、経口中絶薬がフランスで開発され、1988年に中国とフランスで初めて承認されました。今では80カ国以上で使われています。経口中絶薬は妊娠継続に必要なホルモンを止めるミフェプリストンと、子宮を収縮させて妊娠組織を外に押し出すミソプロストールの2剤から成り、「コンビ薬」とも呼ばれています。

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当初、経口中絶薬を懐疑的な目で見る人々は少なくありませんでした。そのために、最初に導入したフランスは慎重になり、「妊娠7週(49日)まで」と限定的な扱いをしていました。しかし、経口中絶薬に対する需要の高まりから膨大な研究が行われ、その結果、いまではWHOによって吸引法と並んで妊娠初期(妊娠12週まで)の「安全な中絶」方法だとされています。(参考:WHOの『Medical management of abortion』2018年版)。

経口中絶薬はその安全性と有効性に関するさらなるエビデンスが蓄積されていった結果、2019年には世界で必須中の必須だとされる医薬品を集めたWHOの「必須医薬品コアリスト」にも収載されました。

WHOの必須医薬品コアリスト(2019年版)の表紙

ちなみに、日本で多用されている搔爬法は、2003年にWHOが発行したガイドライン『安全な中絶』において、安全な中絶方法が確保できない場合の代替法と位置付けられ、2012年に発行された『安全な中絶第2版』でも「古くて安全性の低い方法」なので、「まだ使われているようなら安全な方法(薬または吸引)に切り替えるべき」と勧告がなされています。