世界で「中絶観」が変化している

日本も批准する国連の女性差別撤廃条約では、女性にのみ刑罰を科す法律が禁じられており、堕胎罪の撤廃は世界の本流です。カトリック教徒が人口の大半を占めるアイルランドでさえ、2018年に国民投票で中絶が合法化されました。そして、第二次世界大戦後、日本の制度を真似て堕胎罪を制定していた韓国でも今年の1月から堕胎罪が無効となっています。

国際的な人権諸条約の中で最も基本的かつ包括的な国連人権規約(日本も批准)にも、「女性と少女に安全な中絶を保障すべき」(社会権規約、2016年)、「女性と少女の中絶に関する自己決定を妨げられない権利」(自由権規約、2019年)が明記されており、世界ではすでに「女性の中絶の権利」は守るべき人権とされているのです。刑法堕胎罪のために「中絶は罪」という意識が根強くあり、法外な料金設定でアクセスが妨げられているいまの日本の現状を考えると、中絶の権利が守られているとは言えません。

-AD-

今、経口中絶薬の承認申請を機に、指定医師が不当に高い値段に設定し、利権を手放そうとしないことに気づいた人々は怒っています。ただ経口中絶薬を導入するだけではなく、搔爬法という旧式の手術を前提に存在してきた指定医師制度も、刑法堕胎罪も見直されるべきなのです。

海外では経口中絶薬の導入で中絶が早期化されることが判明しています。近年、カトリック国でも次々と中絶が合法化されているのは、かつてとは「中絶」の中身が変わったからです。前述した東大の大須賀教授は、中絶薬を使うと「胎のう(胎児と胎盤になるもの)が排出される」と言いました。妊娠早期の中絶ではまだ「胎児」にならないうちに妊娠を終わらせることができるのです。

知識はパワーです。中絶について正しい理解をもつ人が増えれば、「中絶観」そのものも変わっていくでしょう。