とりわけ、そうしたすれ違いが如実に現れるのが職場である。
リモートワークが進んでいるとはいえ、どうしても出社せざるをえない人はいる。Aさんのような「感染に敏感な人」にとっては、「そこまで感染を気にかけていない人」が「意識の低い」存在に見えてしまう。一方、感染をそこまで気にしていない人にとっては、感染に敏感な人は奇妙なまでに過敏な存在に見えてしまう。
では実際のところ、職場ではどのようなすれ違いが起きているのか。都内で働く人たちに取材した。
会議での発言中にマスクを外す
取材のなかで多く聞かれたのは、やはり「マスク」に関するすれ違いだ。
国立研究開発法人・理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」によるシミュレーション結果によれば、マスク着用者が吐き出す飛沫のカット率は、不織布マスクが80%、ウレタンマスクが50%、布マスクが66~82%、他人から吐き出される飛沫のカット率は、順に70%、35~45%、30~40%である。
不織布を使ったほうが飛沫をカットできること、感染のリスクを抑えられることは徐々にポピュラーな情報になりつつある。
「それなのに、ウレタンマスクをしてくる50代の男性社員がいて、本当にため息が出ます……」
都内のメーカーで働くBさん(40歳・女性)は、実際にため息をつきながら話す。