とはいえ夢だけで給料は払えない。ビジネスとしての収支計算は必要だ。藤田氏が狙う宇宙ビジネスの本丸は何か?
「私どもはロケットも打ち上げていませんし人工衛星も作っていません。注目しているのは衛星データの活用なんです。いわゆるビッグデータということになるので、DXでビッグデータを使っている仕事と相似形なんです」
目下進めているのが経済産業省の提供する衛星データを使ったビジネスだ。今年から経産省では衛星データの再利用事業を推進しており、予算も数倍に増えている。データの活用ができる事業を提案すれば、データの利用料金を支援する制度もできているのだそうだ。
これまでINCLUSIVE社のDXはメディア関連が主な取引先だったが、衛星ビジネスでは農業や漁業のDXが主体になるのだという。
「DX=デジタルトランスフォーメンションからSX=スぺ―ストランスフォーメンションへ、宇宙=衛星データを使ってビジネスのあり方を変えていきたいんです」
INCLUSIVE社はネット媒体のアクセス解析をして、編集方針や編成を変えている。同様に衛星データによって農業や漁業を変えていく。

牛のオッパイと人工衛星の関係
衛星からビッグデータと聞いても、まずほとんどの人はピンと来ないと思う。ビッグデータとは膨大な情報の中からこれまで見つけられなかったデータ同士の関連を見つけたり、動向を分析したりすることだ。
こういう関連性を見つけることだという例を挙げる。
日本酒は酒専用の米から作る。その年の米の出来不出来は酒の味を大きく左右する。ある蔵元が米の出来不出来に田んぼごとのバラツキがあることに気づき、天候以外にも何か原因があるはずだと調べ始めてわかったのが、なんとパチンコ。パチンコの新装開店にお父さんたちが並ぶために米の収穫が1~2日遅れた田んぼの出来が悪くなっていたのだ。まさかパチンコが原因で酒の味が悪くなるとは! さらに米の収穫がわずかの日数の違いで決まることも、このことからわかったという。