2020年、2021年はコロナ禍で海外との行き来がほぼできなくなった。海外に暮らしていた留学生や駐在の家庭も日々刻々と変化する世界中の入国&出国ルールに振り回され、それはオミクロン株が拡散している2021年冬も継続している。台湾法人で社長業をつとめていた新垣りえさんにも、人生の大きな転機が一気にやってきたのがこのコロナ禍だった。

その人生の転機とは、1)台湾からスイスへの赴任 2)卵子提供での二度目の妊娠だった。

新垣さんは、37歳から3年もの不妊治療を経て、台湾で卵子提供により第一子を出産している。つまり今回は子連れでの新たな国への赴任と出産とが重なったのだ。ではスイスで子連れの妊婦として、コロナ禍をいったいどのように乗り切ったのか。短期集中連載にてお伝えいただく第2回は、いろいろ考えた上での日本への「里帰り出産」についてお届けする。

登場人物:
新垣りえさん/43歳。台湾法人の社長業をつとめていたが、新たな会社のスイス法人への赴任が決まる。

夫/38歳。ウェブデザイナー&アートディレクター。自称「ゆるふわ自営業」とのこと

息子くん/2019年11月生まれ

ナニーさん/台湾ではナニーさんがいるのが当然の環境だった。台湾でお世話になっていたフィリピン人のダビさんにつづき、スイスではドイツ人のネットさんにお願いすることに。

マンガ/すぎうらゆう

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日本に帰るべきか否かに悩む

「日本に到着したら最優先でやりたいこと、(1)コンビニスイーツの大人買い、(2)特上うな重と肝吸いの出前注文、(3)運転免許の更新、(4)ユニクロでベビー服のまとめ買い」……。7月24日の深夜、こんなことに思いを馳せながら、やっと眠りについた息子を横目にスイスチューリッヒから成田行きの飛行機に乗っていました。

イラスト/すぎうらゆう

日本に里帰り出産をすると決めてから、不確定な情報をもとに判断しなければいけないことの連続で、帰国直前の準備は想像を超えるドタバタ劇でした。コロナ禍ということもあり、いつもより準備・対応しなければいけないことが多かったことが主な要因なのですが、自分が妊娠後期にさしかかりつつあり、1歳半の息子を長い旅路に同伴することも相まって、日本帰国前の数週間はせわしない日々が続きました。

そもそも、帰国するタイミングの判断が平時よりも格段に難しいのです。妊娠36週ギリギリまで待つか、それよりもっと前に帰るか?海外駐在員コミュニティーの中では、日本帰国後の14日間の自宅待機がそろそろなくなるのではないかという希望的観測がありました。臨月ギリギリの8月末まで待てば、日本国内でのコロナワクチンの接種が進み、東京オリンピックも一段落して日本の水際対策が更新される可能性があるのではないかと囁かれていたのです。この可能性に賭けたいという思いがある一方、臨月に入ってから長時間飛行機に乗るリスクの懸念もあり、悩ましい判断となりました。

私の場合、43歳という高齢に加え、第三者提供卵子による妊娠であることから、高リスク妊婦であることは自覚していました。妊娠後期の大きなお腹で1歳半の息子と長時間飛行機乗ることのリスクを冷静に考えなければいけません。スイスでお世話になっていた産婦人科の医師には、妊娠32週にさしかかる前には日本に帰国して、早めに日本の産婦人科でエコー検査をし、出産準備を整えることが望ましいと言われました。正直いえば、日本の水際対策が更新されることを期待して臨月ギリギリまで帰国を待ちたいという気持ちも捨てきれませんでした。しかし今回は医師の助言に従い、妊娠31週4日にあたる7月25日に日本に帰国することを決めたのでした。