サステナビリティを学び、体感できる国内外の旅の特集号(FRaU2021年12月号)第一弾でクローズアップした徳島県。徳島といえば、阿波おどり、鳴門の渦潮、すだちなどが有名ですが、徳島生まれの著名人もたくさんいます。
徳島の女性=「阿波女」は、伝統的に働き者で明るく、自立心旺盛といいます。そんな阿波女スピリットを胸に社会に貢献する徳島育ちの女性、スタンフォード大学の学生・松本杏奈さんをご紹介します。
松本杏奈
徳島市出身の18歳。徳島文理高校を卒業後、2021年秋より米スタンフォード大学へ進学。「誰も取り残さない社会と技術と芸術を」という理念のもと、ヒューマン・コンピュータ・インタラクションを研究する。高校生向け研究プログラムの運営や海外大学受験生の支援活動も行う。柳井正財団第5期生。絵画などの創作活動もライフワークのひとつ。
いい方向に影響を与える“問題児”になる
〈大学に進学できます!!! 本日、無事に学費・寮費等全額補助の給付型奨学金に合格しました! これで胸を張って言えます!! スタンフォード大学に進学します!〉
2021年の春、徳島の高校生・松本杏奈さんが投稿したつぶやきがTwitterを駆け巡った。塾に通わない、英語のスコアは決して高いとはいえない、受験を決意した時点で課外活動歴や受賞歴もない……。ないない尽くしのハンディを無我夢中で克服して手にした合格通知。けれど何よりも苦労したのは、周囲の大人の理解を得ることだったという。「夢ばかり見ているんじゃない」「女子に理系は無理だ」「日本でもそれはできるだろう」。けれど松本さんはあきらめなかった。

「他人に言われて決めたとしても、もたらされる結果は自分の責任です。だから人生で訪れる選択と決定は、必ず自分でしたい。他人には流されないと説得をつづけるうち、高校の3人の先生が、受験に必要な推薦状を書いてくれたのです」
きっと“問題児”である私をおもしろがってくれたのだろう、と、自身を分析する。小学生の頃から「なぜ?」が口グセ。物事の理由に納得しなければ、たとえ先生が言うことでも動かなかった。
「人は歯車の一部となり、それが回ることで社会は動いている。私はそこに嚙み合わない問題児。歯車を止めてしまう“棒”のような存在だと思ってきました。けれどあるとき、チャップリンの映画『モダン・タイムス』を観て気がついたんです。一方向に回る歯車だけでは流れは変わらないけれど、棒を挿すことで流れは変えられるんだと。せっかく問題児に生まれてきたのなら、いい方向に影響を与える問題児になろうと思いました」