2022.01.09

冬の北海道に現れた「幻の白い海」…約半世紀ぶりによみがえった絶景の「ウラ側」に迫る!

NHK北の海取材班 プロフィール

かつてのニシン漁を知る、漁師歴70年の竹内司 (たけうち・つかさ)さんは、「ニシンが来る来ないによって、1年の生活が決まった。私たちの先代からすると、それほどまでにニシンは宝の魚だった」と振り返る。一方で、竹内さんはニシンを「人を惑わす魚」とも表現する。その言葉通り、一攫千金を夢見て、漁師たちは目の前に押し寄せる宝の魚に夢中になり、ニシンは獲り尽くされてしまったのだ。

NHK提供
拡大画像表示

乱獲は長年続いた。それに環境の変化も加わって、ニシンの漁獲量は激減。群来も消滅してしまった。

それから長い月日が流れ、今世紀目前。ようやく宝の魚であるニシンを取り戻そうと地元の漁業関係者が舵を切り、「ニシン復活作戦」が始まったのだ。

育成した200万匹もの稚魚を毎年放流したり、未成熟なニシンを獲らないなどの漁法を規制したりといった、地道な資源管理を四半世紀にわたって続けてきた。その努力の賜物として、約半世紀ぶりに群来が復活したのだ。

ひと冬をかけた今回の取材では、石狩湾沿岸だけで14回もの群来に遭遇することができた。海の恵みをいただいてきた私たちは、こうした神秘的な光景の消滅、そしてその復活の行く末を、これからも見守っていく必要があると改めてかみしめる取材となった。

地道な努力で復活を始めた群来/NHK提供

番組ではこのほか、春の日本海に突如現れる謎の大渦の正体や、初夏に世界自然遺産・知床の海底を飛び跳ねる推定30万匹のホタテガイの大移動の撮影に成功。こうした現象の背景にも迫る。「幻の白い海」とともにぜひその絶景をご覧いただきたい。

(記事構成:高村由佳)

海底を埋め尽くすホタテ/NHK提供
突如現れてうごめく大渦/NHK提供
【番組情報】
「NHKスペシャル 北の海 よみがえる絶景」
1月9日(日曜日・午後9:15〜)放送予定


北海道の海で、アイヌや地元漁師に語り継がれる「幻の絶景」がある。冬、夜明けとともに真っ白に染まる海。春、海原に突如現れる謎の大渦。そして初夏、みるみるうちに貝で埋め尽くされる海底。今、極めてまれに起こると思われていた、こうした絶景の目撃が相次いでいる。徹底取材で真相に迫ると、その背景には、日本人にもなじみ深い生きものたちの驚異の営み、そして水産王国「北海道」の漁師たちの格闘の歴史が秘められていた。

番組ページはコチラhttps://www.nhk.jp/p/special/
 

関連記事