正恩氏は2020年6月末の会議で「国家と人民の安全に大きな危機をもたらす重大事件を発生させた」と語り、朴正天総参謀長らを面前で非難したうえで更迭した。ところが、北朝鮮は9月、朴氏の党軍事委員会副委員長と党書記への就任を発表した。いずれの動きも、労働新聞などを通じ、北朝鮮国民らが知るところとなった。
最高指導者に権威は集めるものの、権力は高位層と共有する。金正恩氏は現在、「赤い貴族」と呼ばれる高位層と共生関係にあると言える。
北朝鮮では公式報道では決して紹介されないごく少数の幹部がいる。巨大な金日成と金正日の銅像がある万寿台の丘にある朝鮮革命博物館には、外国人が入室できない、こうした「赤い貴族」の功績をたたえる特別室もあるという。
1日午後現在、正恩氏は新年のあいさつを行っていない。10年間、うまく進まない国政運営に嫌気が差しているのかもしれない。自力更生だけで乗り切る局面が長期化すれば、北朝鮮の権力は「正恩氏と高位層の共生関係」から更に進み、「最高指導者は君臨すれど、統治せず」という構図に変わっていくだろう。