2022.01.14

『昆虫記』のファーブル、じつは「年収160万円」のなかで研究に励んでいた…!

フンコロガシのエサ代にも困り…
堀江 宏樹 プロフィール

50サンチームが庶民の暮らしをどれほど圧迫するものか、わかっていただけるでしょう。その一方で、当時の家畜の糞の価値がここまで高かった事実にも驚いてしまいますが。

しかし何日か後、馬糞をくすねる下男の行いが彼の雇い主に早くも見咎められ、「糞の提供はもうできない」と言われてしまいました。毎日の手痛い出費はなくなったものの、今度はファーブル自身が街を歩き、糞の調達を行わなくてはならなくなります。
しかもそこまでしてエサを確保してやっていたのに、フンコロガシたちは手狭なケージ内で糞を与えられるだけの生活に順応できず、すべて死んでしまったのです!

 

子どものバイトを雇って研究

次にファーブルは、「フンコロガシの幼虫が欲しければ、卵を探せばいいじゃない」と発想を転換しました。フンコロガシのメスは糞を洋梨型に固め、そこに卵を丁寧に産み付けます。ファーブルは近所の子どもたちに、「『蛆虫(=フンコロガシの幼虫)』がついている『団子』を見つけて持ってこられたら、1個あたり1フランで買い上げる」と約束するのでした。

月給133フラン、しかも大家族の世帯主であるファーブルの毎月の研究費用がいくらだったかはわかりません。物価が高い当時の常として、一家の1カ月の食費代だけで133フランの半分くらいは消えてしまっていてもおかしくはなく、残りの66.5フランから、「団子」1個に1フランも支払うなんて約束をしてもよかったのでしょうか。

ファーブルも1フランの支払いについては「気違い相場」だったと告白していますが、そんな夫の奇妙な所業をじっと見守り続けた彼の妻こそ、真の偉人だといえるのかもしれませんね。

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