オーストラリアと結んだ「円滑化協定」
岸田文雄首相とオーストラリア(豪州)のモリソン首相は6日、自衛隊と豪軍が相互に訪問する際の手続きを簡略化する「円滑化協定」に署名した。米国との間で締結している日米地位協定に準じるもので、豪州との連携を深め、日米豪印4カ国、いわゆる「クアッド」で取り組む対中国戦略をさらに進める形になった。

豪州との間では昨年11月、海上自衛隊の護衛艦が米軍に対する防護を除いては初となる豪海軍のフリゲート艦を守る武器防護を実施した。2017年には弾薬や役務を融通する物品役務相互提供協定(ACSA)も締結している。

急速に進む日豪防衛協力の延長線上にある円滑化協定ついて、岸田首相は署名式で「安全保障協力を新たな段階に引き上げる画期的な協定だ」と述べ、モリソン首相は「日本はアジアで最も近いパートナーだ」と持ち上げた。
この協定を一番歓迎しているのは、米国のバイデン大統領ではないだろうか。
豪軍が自衛隊基地など日本の施設を簡単に利用できるようになれば、米軍と同様に日本列島を出撃基地兼補給基地として使えるからだ。対中包囲網を強化するうえで便利なことこの上ない。
昨年夏、「クイーン・エリザベス」を旗艦とする英国の空母打撃群が自衛隊基地に寄港した際、空き岸壁が足りず、代わりに横須賀や佐世保といった米軍基地が受け入れたのを見ても、米国は対中戦略で足並みを揃える国は大歓迎なのだ。
米国に貢ぎ続ける日本
折しも、円滑化協定が署名された翌日の7日には日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれ、中国について「地域や世界に対する政治的、経済的、軍事的および技術的な課題を提起する」と一致して懸念を表明した。
共同文書には「日本は国家の防衛を強固なものとし、地域の平和と安定に貢献するため、防衛力を抜本的に強化する決意を改めて表明した」と書き込んだ。