「防衛力を抜本的に強化」とは、2021年度補正予算と22年度当初予算案を合わせて「防衛力強化加速パッケージ」と名付け、初めて6兆円の大台に乗った合計6兆1744億円の防衛費を指すとみられる。
対国内総生産(GDP)比は、目安としてきた1%を上回り、米国が北大西洋条約機構(NATO)など同盟国に求める「対GDP比2%以上」に近づいた。
それだけではない。共同声明には「同盟の即応性と抗たん性を高めるために日本の米軍への支援を拡大し、再編成する」との言葉も盛り込まれた。
これは、2022年度以降の5年間の在日米軍駐留経費負担(通称「思いやり予算」)について、年度平均額を本年度の2017億円より100億円高い約2110億円とすることで米政府と合意したことを指す。
「拡大し、再編成」されたのは、米軍と自衛隊が共同使用する訓練機材の購入費を日本側が負担する「訓練資機材調達費」を新設したことだ。5年間で最大200億円を負担する。
本来、米政府が購入すべき米軍の訓練機材まで日本政府が負担することで在日米軍駐留経費との名目が立ちにくくなり、同盟の即応性と抗たん性の強化を意味する「同盟強靱化予算」に改名した。提供施設整備費も増額され、日本側の費用で米軍施設をさらに充実させる。
防衛費や「思いやり予算」を変質させてまで米国に貢ぎ、豪州との間では円滑化協定を署名するに至った日本政府。ここまでお膳立てしてもなお、日米首脳会談の開催は見通せない。岸田首相は3日のテレビ番組で「難航している。コロナの状況も見ながら日程は考えていきたい」と述べた。オンライン会議さえ、実現のめどは立っていないのだ。