2022.01.15

「現代では戦争は起こりにくい」という主張はなぜ間違っているのか

2021年の紛争の事例をもとに考える

構造において転換を遂げながら進展する世界の紛争

新型コロナ蔓延から二年目となった2021年が終わった。主要国を含めて世界中の諸国が新型コロナ対策に追われた。その最中、8月には、アメリカがアフガニスタンから完全撤退した。それに伴って、タリバン勢力がアフガニスタン全土を掌握した。アメリカの力の低下とともに、介入主義的な軍事展開の時代が終わったことを強く印象付けた事件だった。

日本では、国際問題といえば、アメリカの動向を中心に見る傾向が根強い。そのためアメリカの軍事行動の可能性の低下は、世界における武力紛争そのものの頻度の低下と同じだという印象を与えがちであるらしい。日本では、「現代世界では戦争は起こりにくくなった」といった主張をされている方もいる。

[PHOTO]iStock
 

だが、このような主張には、統計的な裏付けはあまりない。過去10年間の武力紛争・市民に対する大規模暴力・爆破攻撃事件・暴動などの動きを見ると、2020~21年が低水準であったとはいえない。ここ2~3年は微減または同じ程度の武力紛争数と犠牲者数が続いている。これは2010年代前半と比べると、まだかなり高い水準である。

https://www.fsight.jp/articles/-/48545

新型コロナ危機が世界を席巻した後も、ナゴルノ・カラバフ紛争やエチオピアのティグレ紛争が発生しているし、以前から存在していたと言える紛争が悪化している状況も多々見られる。台湾やウクライナなどをめぐって大国が紛争状態に入ることはない、と断言し続けるのも、簡単なことではない。

また、内田樹氏などは、「ドローンやAI制御のロボットを使って、『人間が死なない戦争』にシフトしてゆく」という予言をしている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2c39ce68711f268bb9e1b0c0de3a11e9b5291605

残念だが、ドローンが戦場に導入されてから久しいが、それによって紛争の犠牲者が減った兆候は見られない。そもそもドローンが人間の犠牲が出ない標的だけを攻撃し、人間の被害を防ぐようになった事例など、観察されていない。攻撃兵器に人間の操縦者が乗らないだけで、「人間が死なない戦争」になる、というのは、今のところまだ根拠がない。安全な場所にいる司令官が、より容易に攻撃命令を出しやすくなった、という観察のほうがむしろ多い。

世界の紛争は、単純に増えているか減っているかだけではなく、その構造において転換を遂げながら進展している。2021年の紛争の事例を参照しながら、そのことについて考えてみたい。

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