単身赴任中、元妻はこれを一人でやっていた…
シングルファザーとしての暮らしは、思った以上に大変だった。隼人さんは転勤のない会社に転職し、自分の実家の近くに住んだ。両親の協力を得て、子どもの平日の夕食からお風呂までは任せることができたが、それでも家事と育児と仕事との両立は厳しい。
「ちょうど子どもが小学校に上がるときだったので、その準備が大変でした。算数セットの細かいパーツ一つひとつに名前をつけて……。知恵熱が出て、数日寝込みました(笑)」

そんな日々のなかで思うのは、自分の単身赴任中、元妻はこれを一人でやっていたんだなあ、ということだった。
「シングルファザーって、人からすごく褒められるんです。お弁当つくっただけで、えらいね、すごいね、と。つい天狗になってしまうんだけど、よく考えたら、世の中のお母さんはみんなやっていることなんですよね。でも、お母さんだと褒められない。僕も当たり前だと思っていて、元妻の頑張りに感謝を伝えたこともなかった……」
そんなとき、仕事関係の集まりがあった。「最近、仕事がうまくいかなくて」と先輩に相談をもちかけたら、その先輩は「仕事の前に、家庭はどうなの?」と聞いてきた。
「実は最近、離婚をして……と状況を話したら、先輩は『まずは、元奥さんに謝れ』と言うんです。家族や身近な人に感謝や謝罪の気持ちをもてない奴が、仕事の人間関係をうまくやれるわけがない、と。もちろん、最初は『なんで僕が謝るんだ』と思いましたよ。でも、よく考えたら、人間関係で一方が100%悪いということはない、自分にも少なからず原因があるなと思えてきて」