提供:阪神梅田本店
プラスチックの不使用やゼロ・ウェイストは、高級感や丁寧な接客を強みとしてきた百貨店にとってハードルが高いもの。そこで阪神梅田本店では、独自の「ナビゲータープロジェクト」を活用し、顧客と価値観を共有することからスタート。特に注目すべきは、出店している各店舗と共創することで実現した先進的な売り場作り。そんな阪神梅田本店が目指すエシカルな取り組みを追いました。
アムリターラ
百貨店でもできる!
内装から什器までSDGsな店作り。

「人と自然との有機的なつながりを大切にしたい」という想いのもと、野生や農薬不使用の植物が持つ力を活かして、ナチュラルな方法で作ったコスメや食材を販売している〈アムリターラ〉。店舗の内装は、ホタテの貝殻とヘンプを使った漆喰といった自然施工で、接着剤や化学物質フリー。メインカウンターや商品棚は移転前の店舗で使っていたものをリユースしている。

新しく必要な什器は低温乾燥させた国産無垢材で作り、洪水や土砂災害の防止のためにも、日本の間伐材を使うことで山林の維持管理に貢献。塗装にも、オーガニックの亜麻仁油やえごま油、酸化鉄を使った自然塗料を使用している。
マザーハウス
アップサイクルの新しいカタチ
「ソーシャルビンテージ」を提案。

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念として、途上国の素材と技術を用いたプロダクトの生産・販売を行うマザーハウス。関西の発信拠点として、サステナビリティへの取り組みを店舗全体で表現。バッグの生産過程で余剰となったジュート素材や、通常は廃棄されてしまう木材を活用して什器を製作した。
アグロフォレストリー農法で育ったインドネシア産のカカオ豆からオリジナル配合によって生まれた人気商品の「イロドリチョコレート」は、大阪をイメージした「フルーツミックス」フレーバーを新発売。
また、モノを生み出すだけでなく、モノの終わり方までをデザインすることも作り手の責任という想いから、「ソーシャルビンテージ」サービスを実施。バッグを長く愛用できるようにケア・修理を受け付けたり、回収・リメイクをすることで新たな価値として生まれ変わらせたり。商品購入後のトータルサービスによって、新たな社会の循環を生み出していく。
ビープル バイ コスメキッチン
使用後の空容器を回収する
「リサイクルキッチン」がスタート。

「リサイクルキッチン」は、プラスチックやガラス、アルミなどの使用後の容器を店頭で回収し、資源として新たなアイテムを作るというプログラム。販売→購入→使用→リサイクルの流れを、顧客と一緒に作り出すことができる。

また、古いユニフォームをリサイクルし、オリジナルエコバッグの素材(一部)へ採用。

ほかにも、オリジナルブランドのパッケージに再生プラスチックやリサイクル可能なガラスを採用したり、ギフトボックスにはカカオミックスペーパーや植物由来インクを使用したりと、さまざまな取り組みを行っている。今後もすべてのものを環境負荷の少ない素材に置き換えることを心がけていく。

中川政七商店
食と器を通して
日本各地の文化を継承。

「天下の台所」として人々に親しまれている大阪。だからこそ阪神梅田本店の〈中川政七商店〉では、産地の食文化を取り入れた食品と、その土地の風土が育んだ器で味わう取り組みを推進している。

店頭では「食と器で日本の四季を楽しむ」イベントを定期開催し、ナビゲーターも参加。

SNSも活用しながら、今の暮らしに合ったかたちで慣わしの継承や、食を通じた幸せな毎日を提案していく予定。自然の恵みを大切に守りながら、地域の活性につなげたいと考えている。
ECOALF
資源ゴミをアップサイクル!
地球環境のために作る服。

再生素材や環境負荷の低い天然素材を使った、ヨーロッパ発のサステナブルファッションブランド。ファッション産業が世界の天然資源を大量に使い続けるなか、ペットボトルやタイヤ、漁網などを独自の技術でリサイクルし、これまで300種類以上もの生地を開発してきた。

「Waste is only waste if you waste it.(ごみは無駄にするからムダになる)」というブランドコンセプトのもと、〈ECOALF〉のプロダクトの原料となる海洋ごみを店頭に展示。廃棄物などを資源に生まれ変わらせる取り組みを、ディスプレイを通して伝えている。

〈ECOALF 梅田阪神〉では「都会の日常生活に取り入れられるサステナブル」を提案するため、ライフスタイル雑貨を中心に展開。商品ごとに原料となったごみも展示している。海洋ごみを回収し新たな製品に生まれ変わらせるプロジェクト「UPCYCLING THE OCEANS」としては、シリーズ初となるアウターやバッグなどを発売。定期的に行う店頭イベントでは、社会的な活動をしている異業種のパートナーやクリエイターと取り組み、サステナブルにつながる環境や心身の豊かさについて発信していく。
クリエイターズ ヴィレッジ
自然と人との共生を表現する
クリエイターを支援するコミュニティスペース。

これからの百貨店の在り方の一つとして、顧客との接点を増やすべく、次世代クリエイターの創作活動を応援する売り場も誕生。物販だけでなく、作り手の想いに触れる体験会や個展などを通して、買い手と売り手との垣根を越えたコミュニティを創出したいと考えている。

独創的な雑貨イベントを開催したり、「人や地球にきちんと配慮された素材でいいものを作りたい」というクリエイターに、メーカーや商社から素材を提案してもらうことで創作を具現化したりも。160万店が利用するネットショップ作成サービス「BASE」の関西初リアル店舗「THE BASE MARKET」も出店。
en to en
“モノ”もご縁も末長く大切に。
厳選アイテムをリサイクル什器にディスプレイ。

店名には、顧客や取引先との「小さなご縁」を大切につないでいく売り場にしたいという想いが込められている。「天然素材を愛情を込めて使い育てていく」というコンセプトを内装でも表現。日本でかつて製造されていた家具や、デッドストックの建築金物を扱う〈つむぎ商會〉に依頼した什器を使用している。

ぬくもりあふれる風合いの古家具に並べたのは、編み方や素材の違いによってさまざまな表情を見せるかごバッグたち。使うほどに愛着が深まるものだから、長く大切に使うためのお手入れ会といったワークショップも実施予定。
エシカルコンビニ
内装から売り方までサステナブルに。
新しい形のコンビニエンスストア。

人が地球上で生きるため、今すべきことを提案し、倫理と向き合うコンビニ。阪神梅田本店の店舗設計には、アルミ缶の再生スキームから生まれたリサイクルアルミを使用したテーブルトップや、管理された森林から計画的に伐採された木材を使い、加工したFSC®認証を取得した木工家具、天然石、鉄といった自然由来でオーガニックな材料をふんだんに使用。〈ノムラデュオ〉による協力のもと、ディレクターである早坂奈緒の世界観を反映し、循環素材や環境負荷低減素材を使ったエシカルな空間を実現した。

食品や日用品など、いわゆるコンビニにあるものだけでなく、アパレルやアクセサリー類なども幅広く取り揃えている。環境に配慮した量り売りも導入。〈エシカルコンビニ〉のセレクト基準である6つのキーワードの一つであるExperienceの場として、販売員と顧客が気になることについて会話しながら互いに気づきを得る売り場を目指している。
【お問い合わせ】
阪神梅田本店
https://www.hanshin-dept.jp/
●情報は、FRaU2022年1月号発売時点のものです。
※本記事で紹介している商品の価格は一部を除き消費税を含んだ金額です。なお一部の商品については税込価格かどうか不明のものもございますのでご了承ください。
Photo:Tetsuya Ito Text & Edit:Shiori Fujii