2022.01.16

Amazon創業者ジェフ・ベゾスと「週刊少年ジャンプ」の考え方には“意外な共通点”があった

飯田 一史 プロフィール

先ほども引いた「ジャンプ」編集部へのインタビューの別の箇所からも引いてみよう。

――でもたとえば、最近新しくできたウェブ媒体向けにマンガを編集している編集者に聞くと、作家に対して「この媒体は何歳くらいの、こういうものが好きな読者が多いから、そこに向けてこういうジャンルで、こんなキャラが出てくるマンガを作りましょう」と具体的な方向性まで持ちかけてオファーしていると言っていました。「流行に合わせて作る方が売れるから」と。ところが日本で一番売れているマンガ誌である「ジャンプ」ではむしろ「流行りは気にするな」と言っている。この違いはなにゆえでしょうか。

籾山 「流行っているからやる」が「国民的ヒット作になるかどうか」に直結しないからだと思います。僕も「最低この部数売り切ればいい」だったらそういう発想で作っていたかもしれません。でも、社会現象になるくらい売れることを目指す世界では流行云々は関係ないと感じます。
「ついに大公開…!“国民的ヒット作”を次々生み出す「少年ジャンプ」逆説の企画術」

これらの発言を筆者なりに言いかえれば、「よそがやっていること」を後追いでやっても競合との消耗戦になるだけで、圧倒的に勝つ/売れることはできない。流行りのマネではなく独自に取り組んだものこそが、ライバルに差を付けて顧客から圧倒的な支持を得ることができる、ということだろう。

もっとも、ブラッド・ストーン『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(日経BP社)には、ベゾスがeBayやAppleにすさまじい対抗心を燃やしてサービスや製品の開発に取り組んできたさまが描かれており、「Amazonは競合より顧客にこだわってきた」なる持論は話半分に聞いたほうがいいように思われる。また、「ジャンプ」もかつて鳥嶋和彦が「コロコロコミック」をライバルとみなしてそのビジネスモデルを摂取してきたことが渋谷直角『定本コロコロ爆伝!!』(飛鳥新社)で語られている。

とはいえ、競合をまったく気にしないこと、誰のマネも一切せずに何かに取り組むことは現実的には不可能だ。

Amazonや「ジャンプ」が、競合の追随を許さないくらい圧倒的に勝つには「後追いで手堅くやる」という発想では不可能だと思っている点は間違いない。

[PHOTO]gettyimages
 

やればいいのに似たような事業者がなかなか現れない理由

ただし、新しい事業や才能の投資を積極的に行い、失敗の数と規模を増やし続けることで大ヒットをつかむ可能性を上げるというやり方は、Amazonとマンガビジネスがともに「固定費型」のビジネスだから成立する。

ECサイトやAWSのようにAmazonが手がける(投資している)事業は、初期投資はかさむが、規模が大きくなって損益分岐点を超えると高い利益率を叩き出す「固定費型」である点が特徴だ。

マンガも同様で、雑誌を定期刊行すれば年間億単位の固定費が発生する。ジャンプの場合は本誌にくわえて、新人育成のために読み切りなどの掲載の場をいくつも作り、原稿料をどのマンガ媒体よりもたくさんの新人作家に支払っている。しかしコミックスもまた、一定以上売れると利益率が高くなる「固定費型」ビジネスである。コミックスの単巻100万部を超える作家がひとりいれば、年間億単位の新人に対する投資は優に回収できる――そしてジャンプにはそういう作家が幾人もいる。

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